国内

デジタル庁、不妊治療…甘利明氏の下に集中する菅政権「要の議論」

 デジタル庁の新設や不妊治療への公的医療保険の適用拡大など、菅義偉首相が掲げる目玉政策に関わる自民党内の議論が甘利明税制調査会長の下に集中している。甘利氏は安倍晋三政権で経済政策「アベノミクス」の司令塔を務めた経験があり、菅政権でも政策作りに深く関わる見通しだ。

 「日本の技術が緊張関係のある国に渡った場合は即、リスクになるという視点を持つことが必要だ」

 甘利氏は27日、座長を務める新国際秩序創造戦略本部の会合でこう強調した。

 甘利氏は、米中対立の波及も念頭に、日本の経済面での安全保障の重要性を早くから提唱しており、同本部はすでに経済安保を進めるための法整備などを求める中間報告をまとめた。年内に最終提言を策定し、政府に提出する方針だ。

 甘利氏は、経済安保で日本が存在感を高めるための戦略を議論する党のルール形成戦略議員連盟の会長も務める。27日には国際機関の要職の獲得に戦略的に取り組むことなどを盛り込んだ提言を首相に提出した。

 首相の目玉政策に関し、甘利氏が実質的な責任者を務めるケースも増えている。デジタル庁新設に関する党内協議を一元的に行うデジタル社会推進本部でも座長を務め、来月中旬に提言を策定する方針だ。

 甘利氏はこれまで、平井卓也デジタル改革担当相とともに、デジタル技術で業務変革するデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を求めてきた。甘利氏は情報技術(IT)に詳しい平井氏が温めていたデジタル庁構想を、官房長官時代の首相に進言するよう促したこともある。

 一方、甘利氏が率いる党税調も20日、非公式の幹部会を開き、年末にまとめる令和3年度の税制改正に向けた議論を始めた。甘利氏は「DXに向かう税制」に意欲を示す。

 経済分野だけでなく、首相が強くこだわる不妊治療への支援拡充を議論する議員連盟の会長にも就いた。ライフワークとして取り組む野田聖子幹事長代行に頼まれたもので、2日にまとめた草案では、1回当たりの治療費の助成額を現在から倍増させる30万円とする案などを盛り込んだ。

 甘利氏は平成28年に金銭授受問題で閣僚を辞任したが、党内には「国内外に広く人脈を持ち、政策を実現する力がある」(閣僚経験者)との声が多い。安倍政権の基盤を築いた政治手腕が再び試されている。(長嶋雅子、今仲信博)

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus