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大阪都構想、結果をどう生かすのか 若者世代が見た住民投票

 大阪都構想の是非を問う住民投票が否決された。住民投票の経験、結果を今後の大阪の街づくりにどう生かしていけばよいのか。駐車場のシェアリング(共有)サービスを大阪で立ち上げた「akippa」(アキッパ、大阪市浪速区)社長の金谷元気さんと、2025年大阪・関西万博の誘致にも尽力し、現在は万博パビリオンの提案も行う「inochi WAKAZOプロジェクト」の代表、増田奈保子さん、広報統括、前田未来さんに聞いた。

 akippa社長、金谷元気さん

  --都構想住民投票で反対派が多数を占めた

 金谷 特別区の設置で二重行政を組み替え、仕事のスピードアップにつながるというメリットが見込まれたものの、反対が多数を占めた。これは、大阪市の廃止という強いキーワードに対して、賛成派からの、現在の大阪市に愛着を持つ人たちの心情に寄り添うようなメッセージが足りなかったからではないか。

 --アキッパの街づくりへの貢献は

 金谷 アキッパは月極駐車場やマンションなどの空きスペースを無駄にしたくない人と、一時利用で事前に駐車場を確保したい人を、スマートフォンのアプリでつなげる駐車場シェアリングサービス。梅田や難波、京セラドーム大阪(大阪市西区)や大阪城公園(同市中央区)といった人が集まる施設の周辺は駐車場が少なく、結果的に渋滞を引き起こすことがある。

 事前予約制の駐車場なので、駐車場を予約した人だけが車で行って渋滞を回避する。空いている駐車場を活用して、確実に安く止められる場所をつくり、より訪れやすい街にしたい。

 --その上での課題は

 金谷 ひとつは高齢化。住人の年齢層が高くなると、移動手段の問題が出ている。運転免許を返納すると買い物もままならない。移動が困難になったとき、自動運転の車で乗り合いで移動するなど、鉄道のように大がかりではなく、細かいモビリティー(乗り物)を組み合わせる。5年後には大阪・関西万博があるので、その課題に地元企業として取り組んでいきたい。

 --大阪の活性化に向けどうあるべきか

 金谷 関西は上場企業も多いが盛り上がりが少ない。大阪に大企業に成長するようなベンチャーが増えれば税収増にもつながる。10年、20年後に向けた企業支援やスタートアップ支援が必要。関西国際空港もあり、世界とつながるポテンシャルも高い。都構想では、賛成派も反対派も大阪をよりよい街にしたいという目標は同じだったはず。住民投票後は全員で協力し、よりよい未来を築いていきたい。

 inochi WAKAZOプロジェクト代表 増田奈保子さん、広報統括 前田未来さん

  --都構想が住民投票で否決された

 増田 前回平成27年に行われた都構想の住民投票から5年。その間、インバウンド(訪日外国人客)の増加による好景気などを受けて、大阪の街も大きく変化したと感じている。今回の住民投票は、大阪の未来を占う大切な機会で、友人たちの中には投票率をあげようと発言する人もいた。

 ただ、推進派と反対派の主張それぞれが広く若者に伝わって、投票行動を促したかには疑問が残る。

 --活動は大阪の街とどう関わっているか

 前田 過去には2025年大阪・関西万博の誘致活動にも関わり、今は、万博の来場者が医療や健康について考えることのできるパビリオンの提案を計画している。また、大阪をはじめとした関西や関東、金沢で中高生を対象に「inochiを守る」ために社会をどう変えていくかについて考えるアイデアコンテストも開いている。

 --パビリオンはどういったものにしたいのか

 前田 自分とは関係ないと思っている若者も、生活習慣病や認知症などの病気について考えられる機会にしたい。来場者に健康データを提供してもらって治療につなげる試みや、世界各地からバーチャルで参加できる仕組みを考えている。これまでの万博は大人たちが作ってきた。2025年は若者がプロセスから関わり、万博後の社会を、若者が思い描く未来に近づけたい。

 --これからの大阪はどうあるべきか

 増田 新型コロナの影響で、現代社会は命を守ることと、社会経済活動の二者択一を迫られた。しかし、私たちは2つが両立する世界を作りたい。大阪、関西は医療研究機関などが集積していることから、理想的な健康医療都市になれる可能性を持つ。歴史的に民間の力が重んじられた自由な雰囲気があり、新しいことに挑戦しやすい風土もある。住民投票で大阪の未来について考える機会も得た。命を守りながら、安心して経済活動できる街を、まずは大阪・関西万博を契機に作っていきたい。

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