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断ち切られる中国人留学生ネットワーク 中国経済発展の影響は

 中国から海外への留学生数は年々増加し、世界でもインドを引き離して断然トップとなっていた。かつては卒業しても、そのまま現地に残る割合が多かったが、最近では多くの知識や技術を学んで帰国する学生も増えていて、中国経済発展への貢献度は高かった。ところが新型コロナウイルスや米中経済摩擦の激化によって、人材供給源である海外留学生ネットが断ち切られようとしている。(拓殖大学名誉教授・藤村幸義)

 まずは新型コロナの世界的な蔓延(まんえん)によって、留学先との往来が難しくなっている。中国人学生の留学先で多いのは、米国、英国、オーストラリア、カナダ、日本などだが、日本を除いてはこれら諸国との関係がこのところ急速に悪化していることも大きく響いている。

 米国では、新型コロナへの感染リスクが高くなっているだけでなく、中国人留学生へのビザ発給を厳格化したり、手続きを遅らせたりする動きが顕著になっている。中国外務省によると、5月から9月初旬までの間に、中国人留学生計約300人が米国を出国する際に、空港で携帯電話やパソコンを調べられるなどの扱いを受けたという。

 ある調査によると、今年の帰国留学生は昨年よりも7割方増え、80万人に達するという。多くは国内で就職先を探さなければならない。それでなくとも今年の新卒大学生は874万人と過去最高である。倒産や業務縮小で求人が大幅に減る中で、帰国留学生もかつてない厳しい就職活動を強いられている。

 就職活動では、外国語を習得し国際経験も豊富な帰国留学生が国内の学生よりも有利なのは間違いないが、これだけ競争相手が多いと給与条件なども下げざるを得ない。深センのある銀行では、カウンター業務を募集したところ、国内の有名大学だけでなく、普段ではありえない米国や英国の名門大学の学生も応募してきたという。

 注目すべきは来年以降、急激に中国人の留学生数が減ってしまい、先端技術や経営ノウハウなどの持ち帰りもこれまでのようにはいかなくなることだ。帰国留学生がハイテク企業を立ち上げ、ユニコーン企業(企業価値10億ドル=約1033億2000万円以上の未上場企業)に成長させていく光景もみられなくなるかもしれない。

 新型コロナや米中経済摩擦の激化によって、部品などのサプライチェーン(供給網)が破壊されつつあるが、海外留学生という人材供給ネットまで断ち切られるのは手痛い。

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