《換気のために窓開けなきゃいけないのは分かるけど寒い》《風邪ひいちゃうよ》。
毎日の通勤・通学風景をめぐり、SNSでは11月以降、こんな投稿が目立つようになった。3密で感染リスクが高まるとされる新型コロナウイルス対策として、鉄道各社は電車の窓を一部開けて走行するなどの対策を続けているからだ。公益財団法人「鉄道総合技術研究所」(東京)が公表したシミュレーションでは窓開けの有効性が確認されたが、本格的な冬の到来を目前に、各社は頭を悩ませている。
鉄道総研が10月に公表したシミュレーションは、標準的な通勤電車で左右6カ所の窓を約10センチ開けて時速70キロで走行した場合、車両内の空気は5~6分で入れ替わるという内容だった。
南海電鉄は一部を除き、1車両2カ所の窓を約10センチ開けて走行。車両内の空気が3~10分程度で入れ替わる空調装置も稼働している。車両には「こちらの窓を開けて換気しております」としたシールを貼り、対策に理解を求めている。首都圏を走る東京メトロも一部車両の窓開けを実施しているが、換気が不十分だと判断すれば、乗客が窓を引き下げるように協力を依頼している。
ただ、寒さが厳しくなるにつれ、各社の窓口にはさまざまな声が届いている。
「車両内が寒い」。南海によると、こうした声が1日に数件寄せられる日がある。南海の担当者は「意見は頂戴しているが、感染症が心配な乗客もいる」。引き続きアナウンスなどで周知を図る方針だ。
これに対し、JR西日本には「換気のためにきちんと窓を開けてほしい」といった意見が届くことも。「感染症対策と快適な車内の環境維持の両立は難しい」とJR西の担当者。「お客さまに協力を呼び掛けながら、今後も対策をとっていきたい」とした。