海外情勢

中国との“融和”に募る懸念 「敵性国」と呼ぶことを避けたバイデン氏 (1/2ページ)

 【バイデンの米国】(上)

 「バイデン民主党政権が誕生したら、中国、ロシア、北朝鮮といった米国の敵性国は新大統領を値踏みするため、早々に挑発行動を仕掛ける可能性がある」

 民主党のバイデン前副大統領が当選を確実にした大統領選の開票が進む中、複数の米政府関係者はこのように警告した。特に注目されるのが中国の動向だ。

 トランプ大統領は、1979年の米中国交正常化以降に歴代米政権がとってきた「対中関与路線」との完全決別を宣言した。習近平国家主席率いる中国共産党体制に対しては制裁関税などを通じて強力な圧力をかけ、中国を米国および世界のサプライチェーン(供給網)から切り離す「デカップリング」を進めてきた。

 これに対しバイデン氏は中国にとり「御しやすい相手」に映っているようだ。大統領選前の8月、米情報機関を統括する国家情報長官室(ODNI)が「中国がトランプ氏の再選阻止に向けた工作を展開している」と指摘したのも、こうした見方を裏付ける。

 中国との外交・安全保障分野でバイデン氏を早々に揺さぶる可能性があるのが台湾情勢だ。

 トランプ政権は台湾の蔡英文政権との関係を一気に緊密化させ、8月には米台断交後で最高位となるアザー厚生長官を訪台させた。一方の中国は、軍事演習などの威圧的行動を活発化させて対決姿勢を強める。

 習氏は10月、台湾への上陸進攻作戦の主力となる海軍陸戦隊を視察した際、こう号令をかけた。

 「心と精力の全てを戦争への準備に注ぎ込み、高度な警戒態勢を維持せよ」

 当面「強硬」維持か

 バイデン氏が率いる次期政権について、元米政府高官や有識者の間では「中国に厳しい態度をとっていく点ではトランプ政権と違いはない」との指摘も多い。

 果たしてそうなのか。

 トランプ政権は発足当初から中国を「戦略的競争相手」と位置づけ、強硬な政策路線を敷いてきた。

 米議会でも、中国の不公正な貿易慣行や新疆(しんきょう)ウイグル自治区での少数民族弾圧、香港民主化問題で中国に厳しく対処していく超党派の合意が形成された。

 一方、民主党系の外交・安全保障の専門家や元政府高官の間では、トランプ政権の対中政策に関し「米中冷戦を引き起こす」として約1年前までは批判的な見方が支配的だった。

 しかし、大統領選の同党候補指名争いが本格化した昨年頃から民主党も中国に厳しい立場を打ち出す方向に急転回した。米世論の対中意識が急速に悪化してきたのをにらんだ態度変化であるのは明らかだ。

 バイデン氏は、中国が米国主導の世界秩序を破壊することを食い止めたいという立場ではトランプ氏と一定程度は共通している。

 また、「民主党政権は中国に融和的だ」との批判を封じるためにも、当面は現政権の対中強硬政策を大枠で継続する立場を打ち出すとみられる。

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