メキシコ経済は、2019年4~6月期から1年半にわたりマイナス成長が続いている。新型コロナウイルス前に始まる景気低迷の発端は、18年に発足した左派政権の政策運営にある。
ロペス・オブラドール大統領は、増税を封じる一方、財政規律を重視して政府支出を抑制した。また、前政権下での民間主導の開発を汚職の温床と批判し、新空港建設や石油鉱区の民間入札を取りやめ、政策の不確実性への懸念から民間投資が冷え込んだ。20年に入ると、新型コロナの感染拡大により個人消費や、主力の自動車を中心とした輸出が落ち込み、20年4~6月期の経済成長率は、前年同期比18.7%減少し、1994年以降で最低を記録した。
他方、世界的なコロナ危機により、多くの途上国で移民からの送金が減少する中、メキシコでは、移民送金は増加が続いている。メキシコの出稼ぎ先の大半を占める米国の経済影響は比較的小さかったことに加え、米国で失業給付が増額されたことなども、送金額を下支えした。失業給付の増額は7月末で失効したものの、景気持ち直しに伴って米国の移民失業率も低下しており、今後もメキシコの移民送金は増加が期待される。
世界銀行によれば、メキシコの移民送金受取額は国内総生産(GDP)の約3%となっており、ラテンアメリカ平均の1.9%を上回るが、10%程度のフィリピンなどに比べれば、経済への影響は限定的かもしれない。ただし、移民送金は低所得家計の重要な収入源となっており、オブラドール大統領も感謝の意を示している。(編集協力=日本政策投資銀行)