主張

種苗法改正案 農家の不安減じ成立図れ

 ブランド果実などの海外への不正な持ち出しを禁じる種苗法改正案が参院で審議入りする。

 長年の努力で品種改良を積み重ねてきたブランド果実は国や自治体、開発者らの努力の結晶であり、日本の財産だ。

 それが海外に不正に持ち出され無断で栽培されたのでは、開発者だけでなく、輸出している生産農家にとっても大きなダメージである。

 現行法に不備があるなら改正して、優良品種の海外流出を防止する手を打つのは当然だ。

 法整備により、開発者と農家がともに種苗開発と育成に従事し、国際競争力を高められる環境を整えてほしい。

 改正案は、開発者が農林水産省に登録した新品種について、国内限定などの利用条件を付けられるようにした。衆院で可決した際、種苗が適正価格で安定供給されるよう施策を講じるとする付帯決議も採択された。

 登録品種は高級ブドウ「シャインマスカット」など、全体の1割程度という。開発者に育成者権と呼ばれる知的財産権を認め、違反すれば、個人で懲役10年以下、罰金1千万円以下、法人は3億円以下の罰金が科される。

 焦点となっているのは、改正案が登録品種について、農家が自家増殖する際に開発者の許諾を必要とした点だ。自家増殖は、農家が収穫物から取った種子を次の栽培に使用する栽培法である。許諾制にして流通管理の強化を図る狙いがあるという。

 だが、一部の農家には負担増への不安が募っている。立憲民主党も衆院での審議で「許諾料が高くなり、農家の負担が重くなるのではないか」との懸念を示した。

 農水省は、登録品種の多くは国や自治体が開発し、普及を目的としているから高額の許諾料にはならないという。適正価格による安定供給をどう担保し、価格上昇をいかに抑えるかなど、具体的な施策を示すべきだ。

 改正されると、許諾料目当てに海外の多国籍企業による種子の支配が進むとの懸念もある。

 農水省は、日本の競争力が圧倒的に高いことを理由に心配する必要はないというが、説得力に欠けるのではないか。

 衆院の審議時間はわずか7時間だった。育成者権を守りつつ、農家の不安を払拭するためにも、参院で徹底した審議を求めたい。

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