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なぜ研究費不正はなくならないのか 課題残る「大学の特殊性」と「研究者の意識」

 京都大霊長類研究所(愛知県犬山市)で発覚した巨額の研究費不正。飼育施設建設などでの不正支出は総額11億円超にも上り、京大は24日、元所長の松沢哲郎氏(70)=懲戒解雇=ら計6人を懲戒処分とした。同様の不正は各大学で相次いで報告され、社会の厳しい視線にさらされてきた。それでも、研究費不正が後を絶たないのはなぜか。(桑村大)

 京大の調査結果によると、松沢氏らは平成23~26年度、チンパンジー用飼育施設の整備工事をめぐり、架空取引を行うなどして約5億670万円を不正支出。さらに会計検査院は今月、京大の公表分以外に約6億2千万円の不適正経理があり、総額は約11億2千万円に上ると指摘した。

 霊長研は人間の起源と進化の解明を目指す国内唯一の霊長類の総合研究拠点として愛知県犬山市に設立。松沢氏はチンパンジーを通じて人間の認知や行動の起源を探る研究の第一人者として知られ、文化功労者にも選ばれた人物だ。

 「京大から独立した研究機関で、京都からも地理的に離れている霊長研は監査の目も行き届きにくい。さらに、カリスマに誰も逆らえないとの、日本特有の文化もあったのではないか」。研究費不正に詳しい一般社団法人「科学・政策と社会研究室」代表の榎木英介氏(49)は、今回の問題について指摘する。

 これまでも大学の研究現場では、不正支出が繰り返されてきた。北海道大は26年、16~23年度で計約5億3500万円の不正経理を確認。架空発注で支払った代金を業者に管理させ、後に引き出す「預け金」と呼ばれる手口が慣行化し、59人もの教員が不正に手を染めていたことが判明した。

 京大でも、19~27年度に防災研究所で、元助教が架空の出張旅費を請求する「カラ出張」で約1100万円を不正受給するなど問題が相次ぐ。

 こうした不正について、榎木氏は「年度ごとに研究費が交付される単年度主義が一つの原因」とする。

 国の予算と同様、研究費の多くは使途が決められ、年度をまたいで使用することが難しい。余ったとしても、年度内に使い切るか国に返納しなければならず、手元にプールする預け金の不正が横行した。

 相次ぐ不正を受け、文部科学省などが交付する科学研究費補助金(科研費)では、使い切らなかった予算を翌年度に繰り越せる制度を導入するなど、制約も緩和されている。

 一方、大きな課題として残るのが、「大学の特殊性」と「研究費に対する研究者の意識」だ。

 霊長研の問題で、京大は「世界的な権威である松沢氏に対し、事務職員が強く意見できず、会計手続きで問題があることに気づいても、指摘できるような関係になかった」と一因を挙げた。榎木氏は「大学の研究現場はいまだにベールに包まれた部分も多く、不正の温床になりやすい」とし、透明性を確保した会計制度が必要との見解を示した上で、こう訴える。

 「公的研究費が税金で賄われているという意識が希薄な研究者もおり、(データ改ざんなどの)研究不正とは別に倫理研修で研究者の意識改革も進めるべきだ」

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