このように経済成長が軌道に乗り、大国となった中国は、合理的に国際貢献ができる段階にある。そこで見えてくるのは燃料そのもののCO2対策の潮流である。エネルギー利用で燃料をゼロにすることは考えられない。燃料を使わない風力発電や太陽光発電は蓄電池での貯蔵が必要だが、そのコストはばかにならない。また、再生可能エネルギーを補完する火力発電は、製鉄での燃料を全廃することはできない。
燃料のCO2対策は、水素燃料の利用かCO2の地中や植物への固定化、あるいは化学製品などで再利用するCCUS(二酸化炭素固定・有効利用・貯留)である。風力発電の限界が見えてきたEUでは燃料技術への関心がより高まっており、コロナ後の「グリーンリカバリー(環境投資による経済復興)」を打ち出し、水素やCCUSへの前倒し投資も焦点となる。
菅義偉首相が「2050年カーボンニュートラル」を宣言し、日本企業は対応に苦慮している。しかし、大規模風力発電・太陽光発電の導入拡大の短期勝負に巻き込まれれば、日本は他国技術へ依存し、貿易収支を悪化させるだけになる。中国、欧米各国との競争の視点から60年を見据え、再生可能エネルギーだけでなく、水素やCCUSが来年公表される日本の第6次エネルギー基本計画で重要なテーマとなる。
【プロフィル】瀧口信一郎 たきぐち・しんいちろう 京都大学理学部を経て、1993年同大大学院人間環境学研究科修了。テキサス大学MBA(エネルギーファイナンス専攻)。Jリート運用会社、エネルギーファンドなどを経て、2009年日本総合研究所入社。創発戦略センターシニアスペシャリスト。専門はエネルギー政策、エネルギー事業戦略、分散型エネルギーシステム。著書に『中国が席巻する世界エネルギー市場 リスクとチャンス』『ソーラー・デジタル・グリッド』(ともに日刊工業新聞社・共著)、『エナジー・トリプル・トランスフォーメーション』(エネルギーフォーラム・共著)など。1969年生まれ。