専欄

コロナで揺れた2020年の中国 闘いは21年も続く

 元滋賀県立大学教授・荒井利明

 今年も残りは半月。2020年、中国は新型コロナウイルスに翻弄され、国家目標だった「小康(ややゆとりのある)社会」全面的実現の宣言は来年前半に持ち越しとなった。

 最高指導者の習近平は今月上旬、「貧困脱却」を達成したと宣言した。農村の貧困層をなくすことは小康社会全面的実現の具体的目標の一つで、昨年は1109万人の農民が貧困から脱却し、残りは551万人となっていた。宣言はこれがゼロになったことを意味している。

 習近平が最高指導者になって以来の8年間で、1億人近い貧困人口が貧困から脱却した計算になるが、「中国の発展には不均衡、不十分という顕著な問題がある」ため、貧困を脱した人々が再び貧困に陥ることがないよう努めることが重要だという。

 小康社会全面的実現のもう一つの重要な具体的目標は、20年の国内総生産(GDP)を10年の2倍に増やすことである。そのためには5%台後半のGDP成長率が必要だった。だが、コロナの影響で、今年第1四半期はマイナス成長に転落した。幸い、コロナ制御に成功し、第2四半期以降プラス成長に転じたが、通年の成長率は2%弱にとどまる見込みである。

 このため年内に、小康社会の全面的実現を宣言することはできなくなった。習近平は10月下旬の共産党中央委員会総会で、小康社会が全面的に実現できたかどうかを来年前半に吟味すると述べている。

 来年7月1日、共産党は創立百年の記念日を迎える。習近平は小康社会の全面的実現を宣言することによって、創立記念日に花を添えようと考えているのだろう。

 その前提は「コロナゼロ」の維持である。多くの国はワクチンによって「コロナゼロ」を実現しようとしているが、中国はワクチンの開発を急ぎながらも、ワクチンなしで「コロナゼロ」を事実上達成している。

 昨年12月から今年1月にかけて初期の対応に誤りはあったものの、制御で成果を挙げることができた鍵は、(1)「コロナゼロ」の実現を目指す強い政治的意思(2)大規模かつ徹底した早期検査をベースにした「四つの早い」(早期の発見、報告、隔離、治療)の遂行(3)ハイテクを活用した厳格な国民管理・監視システムの採用-といえよう。

 中国も対策をおろそかにすれば、たちまち感染が拡大するだろう。コロナとの闘いは21年も続く。(敬称略)

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