海外情勢

英、EUから完全離脱 「グローバル・ブリテン」構想も足元に不安

 【ロンドン=板東和正】英国を欧州連合(EU)加盟国と同等に扱う「移行期間」が31日に終わり、英国はEUを完全に離脱する。ジョンソン英政権はEUの規制から英国を解き放ち、世界各国との連携で経済成長や影響力拡大を図る「グローバル・ブリテン」構想を掲げている。だが、足元では離脱に伴う物流の混乱が予想され、離脱反対派の多い英北部スコットランドでは独立機運が高まるなど不安材料も少なくない。

 移行期間は31日午後11時(日本時間1月1日午前8時)に終了し、2016年6月の国民投票から約4年半を経て、英国は独自の歩みを本格化させる。

 英国は年明け以降、これまでEUに合わせていた環境や労働などに関する規制を独自に決め、自国経済の競争力向上を図る。欧米だけでなくアジア諸国との貿易も重視したい考えで、21年の早い時期に環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への加盟を申請する方針だ。ジョンソン首相は「世界と自由貿易を進め、英国史に新たなページを開く」と強調している。

 安全保障面の存在感向上も狙っており、英政府は11月、軍事分野に今後4年間で165億ポンド(約2兆3千億円)を追加支出すると発表した。冷戦終結後で最大の軍事投資とされ、「宇宙司令部」の創設や人工知能(AI)を専門的に扱う組織の新設につなげる。

 EUとの自由貿易協定(FTA)をめぐっては31日までに、英議会の上下両院が批准に向けた関連法案を可決し、エリザベス女王の裁可も得られた。EU側もFTAを暫定発効させる準備を終えているため、年明け以降も関税なしの自由貿易が維持される。

 ただ、EUとの人やモノ、サービスの自由な移動は終わる。物流では検疫や原産地証明の確認といった通関手続きが必要になり、英仏間を往来するトラックの渋滞や貨物の滞留といった混乱が懸念されている。英メディアによると、英国の国内総生産(GDP)を長期的に4%以上押し下げるとの見方がある。

 英経済の根幹をなす金融機関は年明け以降、EU加盟国で認可を受けない限り、EU域内で取引できなくなる。認可を得るために業務をEUに移す金融機関が相次ぎ、世界屈指の金融街シティーを抱えるロンドンから事業や人材が流出する恐れもある。

 「連合王国」の分断も深まった。EU離脱に否定的な住民が多いスコットランドの行政府は、英国からの独立の是非を問う2度目の住民投票を検討している。独立を訴えるスコットランド民族党(SNP)が5月のスコットランド議会選で勝利すれば、投票実施に向けてジョンソン政権への圧力を強めると予想される。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus