新型コロナウイルスの感染拡大に伴い8日、東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県を対象に緊急事態宣言が再発令された。昨年4月に発令された前回の緊急事態宣言は、幅広い施設店舗に対して営業休止を要請したが、今回は「限定的、集中的」な措置とし、感染リスクが高いとされる飲食店に重点を置いたのがポイントだ。コロナと闘う社会は、宣言によってどう変わっていくのか。
夜間の飲食 感染防止を徹底
政府は今回の宣言発令にあたり、過去1年間の経験や国内外のさまざまな研究で得られた知見を踏まえ、「社会経済活動を幅広く止めるのではなく、感染リスクの高い場面に効果的な対策を徹底する」との方針を掲げている。そこで、対策のカギとされたのが「夜間」と「飲食店」だ。
前回は飲食店に対し、営業時間を午後8時までに短縮するよう要請したほか、カラオケボックスなどの遊興施設やスポーツクラブなどの運動施設、パチンコ店、ゲームセンターなどの遊技場など幅広い施設店舗に対して営業休止を要請。パチンコ店に関しては応じない店名の公表も行った。
対して今回は、飲食店やカラオケボックスなどに営業時間を午後8時までに短縮するよう要請。応じない場合は店名を公表するとした。密になりやすく、飛沫(ひまつ)が飛ぶ「酒食を伴う夜間の会食」が感染拡大を招いているとの分析から限定的な措置をとった形だ。劇場や映画館、遊技場などには、営業休止ではなく営業時間を午後8時までに短縮するよう協力を求めている。
集客イベントについては、前回は開催そのものの自粛を求めたのに対し、今回は開催自体に制限を設けず、観客を上限5千人か定員50%以下のいずれか少ない方にした上での開催を求めている。学校や教育機関も、前回は多くの自治体が休校措置をとったが、今回は休校要請をしない一方、飛沫感染の可能性の高い部活動や合唱などの活動は中止するとした。
再発令は限定的かつ集中的
事業者には「出勤者数の7割削減」を目標に、テレワーク(在宅勤務)、時差出勤、ローテーション勤務の徹底を要請。従業員への基本的な感染防止対策の徹底や会食自粛の呼び掛けも求めている。
1都3県は今回、飲食店への営業時間短縮要請などの一連の対策を共同でとりまとめた。長引くコロナ禍による自粛疲れなどを背景に、注意喚起のメッセージが届きにくくなっていることへの懸念が指摘されており、連携して対策を講じることで住民や事業者の理解を得たい考えだ。
営業時間の短縮要請に関し、政府は飲食店への協力金を増額することで応じる店を増やしていく意向。国が設定する協力金は緊急事態宣言期間中、1都3県を対象とし1日当たりの基準額を4万円から6万円へと引き上げる。実際にいくら支給するかは自治体側が決めるものの、国の増額措置に伴い、店への支給額を引き上げるとみられる。
日常生活 「5つの場面」しっかり避けて
緊急事態宣言下の日常生活では、感染を防ぐためにどんなことに気を付けるべきか。政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会が感染リスクの高い行動として示した飲食などの「5つの場面」を避けることが基本となる。本格的な冬を迎える中、専門家は換気の重要性も改めて呼びかける。
5つの場面とは、(1)飲食を伴う懇親会など(2)大人数や長時間におよぶ飲食(3)マスクなしでの会話(4)狭い空間での共同生活(5)居場所の切り替わり-のこと。具体的には、回し飲みや箸などの共用、5人以上の飲食、昼間のカラオケなどが感染リスクを高める。寮のトイレなどの共用部分、喫煙所や更衣室が(4)(5)の感染例として挙げられるという。
新型コロナ対策を厚生労働省に助言する専門家組織は6日の会合で「感染拡大の抑制には、市民の皆様の協力が不可欠」と提言。新年会の開催や参加を控え、買い物も混雑を避けるなど、感染機会の増加につながる行動の変容を要請した。3密の回避、マスクの着用、手洗いなどの基本的な感染対策も推奨した。
東邦大教授で日本感染症学会の舘田一博理事長は「満員電車ではマスクをして、静かに乗っていれば、リスクが高いわけではない。街中で、通りすがりに感染させられるわけでもない。一方、会社に行くと飲食の機会も増えるので、テレワークを徹底するなど不要不急の外出を控えることも求められる」と指摘した。