専欄

米新政権への中国の期待 「トゥキディデスのわな」回避できるか

 元滋賀県立大学教授・荒井利明

 2021年の中国外交は、恒例の外相によるアフリカ諸国歴訪によって幕を開けた。最大の発展途上国と自らを位置付ける中国にとって、アフリカ諸国との良好な関係は外交上の重要な資産だが、中国外交にとって米国との関係が最大の課題であることは今年も変わらない。

 12年秋に発足した習近平政権は総合国力の増大を背景に米国との間で、対抗せず、相互に尊重し、ウィンウィンの協力を目指す「新型大国関係」を構築しようと、当時のオバマ政権に提起した。

 オバマはこれにいったんは同調する姿勢を見せたものの、中国が尊重するよう求めた「核心的利益」などをめぐって対立し、「新型大国関係」は両国関係を律するキーワードとしては機能しなくなってしまった。

 「米国第一」を唱えて登場したトランプは、中国を「戦略的競争相手」と位置付け、貿易戦争から覇権争いへと対立をエスカレートさせた。国務長官のポンペオは昨年7月の演説で、米国の歴代政権の対中関与政策を否定した上で、対中包囲網の形成を同盟国などに呼びかけた。さらに、習近平を「破綻した全体主義イデオロギーの真の信奉者」と断じ、米中の対立をイデオロギー上の対立ととらえて、中国共産党の一党支配体制の転換を暗に唱えるまでに至った。

 既存の覇権国と新興大国との厳しい対立はこれまで繰り返されてきたことだが、現在の米中関係は1972年の米中和解以降では最悪といわれ、新冷戦の様相を呈している。

 外相の王毅は2日に公表された国営メディアとのインタビューで、悪化した両国関係の根本原因は米国の政治指導者の「対中認識の偏向」にあるとし、「中国を最大の脅威とみなして、完全に間違った対中政策をとっている」と述べ、トランプ政権の対中政策を批判した。

 王毅はさらに、両国関係は新たな岐路にあると指摘し、「米国の新政権が理性を取り戻し、対話を再開し、両国関係が正常な軌道に復帰し、協力を再始動することを望む」と、新政権への期待を語った。

 だが、米国民の対中感情は悪化しており、「中国脅威論」はなくなりそうにない。バイデンも昨年末の演説で、同盟国やパートナー国と連合して「中国と競う」などと語っている。

 米中両国は新冷戦、「トゥキディデスのわな」を回避して、安定した関係を再構築できるだろうか。(敬称略)

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