三 わが国の長年の課題に答えを
国民の皆さんの「希望」を実現したい。そうした思いで、わが国の長年の課題に答えを出してまいります。
バブル崩壊後、わが国が抱える問題について、長年にわたって、次のように言われ続けてきました。「日本企業のダイナミズムが失われた」、「デジタル化の流れに乗り遅れ、新たな成長の原動力となる産業が見当たらない」。
アベノミクスの「三本の矢」により、日本経済はバブル期以来の好調を取り戻しました。しかしながら、ポストコロナの時代においても、わが国経済が再び成長し、世界をリードしていくためには、多くの壁が立ちはだかっています。行政の縦割り、既得権益、そしてあしき前例主義を打ち破り、未来を切り拓(ひら)いていく。困難な課題にも答えを出していくのが、私の内閣です。
地方で、家族を育み、老いても安心して暮らせるよう、地方の方々の所得を引き上げる施策を追求してまいります。そうした動きを国全体の活性化につなげ、わが国が持続的に発展していくため、成長志向の政策運営を続けます。
高齢者をはじめ、誰もが安心できる社会保障制度をつくり、未来を担う子供たちや若者のための政策を進めます。
まずは、次の成長の原動力をつくり出します。それが、「グリーン」と「デジタル」です。
(グリーン社会の実現)
2050年カーボンニュートラル(温室効果ガスの排出実質ゼロ)を宣言しました。もはや環境対策は経済の制約ではなく、社会経済を大きく変革し、投資を促し、生産性を向上させ、産業構造の大転換と力強い成長を生み出す、その鍵となるものです。まずは、政府が環境投資で大胆な一歩を踏み出します。
過去に例のない2兆円の基金を創設し、過去最高水準の最大10%の税額控除を行います。次世代太陽光発電、低コストの蓄電池、カーボンリサイクルなど、野心的イノベーションに挑戦する企業を、腰を据えて支援することで、最先端技術の開発・実用化を加速させます。
水素や、洋上風力など再生可能エネルギーを思い切って拡充し、送電線を増強します。デジタル技術によりダムの発電を効率的に行います。安全最優先で原子力政策を進め、安定的なエネルギー供給を確立します。2035年までに、新車販売で電動車100%を実現いたします。
成長につながるカーボンプライシング(二酸化炭素の排出に課金して排出抑制につなげること)にも取り組んでまいります。先行的な脱炭素地域を創出するなど、脱炭素に向けたあらゆる主体の取組の裾野を広げていきます。CO2(二酸化炭素)吸収サイクルの早い森づくりを進めます。
世界的な流れを力に、民間企業に眠る240兆円の現預金、さらには3000兆円とも言われる海外の環境投資を呼び込みます。そのための金融市場の枠組みもつくります。グリーン成長戦略を実現することで、2050年には年額190兆円の経済効果と大きな雇用創出が見込まれます。
世界に先駆けて、脱炭素社会を実現してまいります。
(デジタル改革)
この秋、デジタル庁が始動します。
デジタル庁の創設は、改革の象徴であり、組織の縦割りを排し、強力な権能と初年度は3000億円の予算を持った司令塔として、国全体のデジタル化を主導します。1兆円規模の緊急対策として改革に着手し、全国規模のクラウド移行に向け、今後5年間で自治体のシステムも統一、標準化を進め、業務の効率化と住民サービスの向上を徹底してまいります。
マイナンバーカードの普及のため、マイナポイントの期限も半年間延長します。この3月には健康保険証との一体化をスタートし、4年後には運転免許証との一体化を開始します。
行政機関が保有する法人などの登録データをシステム上の、いわゆるベースレジストリ(台帳などの社会の基本データ)として整備し、デジタル社会の形成に不可欠なデータ利活用を進めてまいります。