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中国の沿海地区で深刻な電力不足、なぜ起きたか

 中国の沿海地区で深刻な電力不足が表面化しており、中には“戦時状態”を宣言したところもある。火力発電の原料となる石炭、とりわけ輸入炭が大幅に不足しているのが原因のようだが、なぜ輸入炭がそれほどまでに減ってしまったのか?(拓殖大学名誉教授・藤村幸義)

 中国政府は環境汚染対策の一環として、二酸化炭素(CO2)などの有害物質を多く排出する石炭の使用を控える政策を取っている。中長期的に見れば、中国では石炭消費が減少していくのは間違いない。

 しかし輸入炭は過去数年、着実に増えていて、2019年には年間で3億トンに達している。国内の石炭に比べると、割安で品質も良いからだ。特に港湾の多い沿海地区は、輸入に便利なので、輸入炭への依存度が高まっている。主な輸入先はオーストラリア、インドネシア、ロシア、モンゴルである。

 ところが、昨年の5月頃から輸入炭が減り始めた。8月には前年同月比で30%以上の減少となり、11月には43.8%減という大幅な減り方となった。このため、輸入炭を原料としている沿海地区の火力発電所の操業に支障をきたしてしまった。

 年末になると、湖南、浙江、江西などの各省で、電力不足が表面化し、当局が企業などに節電を呼びかける事態となった。広東省では、何の予告もなく停電が発生し、市民生活への影響も出ている。

 なぜ輸入炭が大幅に減ってしまったのか?まず頭に浮かぶのは、オーストラリアとの関係悪化である。オーストラリアは新型コロナウイルスの流行をめぐって、中国の初期対応がまずかったと批判したほか、第5世代(5G)移動通信システムについても安全保障上から中国製を排除する動きを見せている。これに対し中国も反発して、石炭などオーストラリア製品の輸入に追加関税を課したりしている。

 中国側は、オーストラリアからの輸入炭は主に原料炭として使われており、火力発電向けの一般炭は少ない、と弁明している。それよりは、新型コロナからの生産回復が急ピッチだったこと、この冬の気候が寒冷であること、一部発電所で故障が発生したことなどが原因だとしている。

 だが、一般炭向けもかなりある、とのオーストラリア側の報道もある。中国は急遽(きゅうきょ)、インドネシアなどから手当てを増やしているようだが、この冬は沿海地区を中心に、人災ともいえる電力不足に悩まされそうだ。

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