国内

米の環境政策加速、日本に求められる協調と競争

 バイデン米大統領は就任初日の20日、地球温暖化防止の国際枠組み「パリ協定」復帰の大統領令に署名するなど、脱炭素推進に意欲を示した。環境政策で米経済を成長させる「グリーン・ニューディール」を前面に打ち出し、トランプ前政権で緩和した環境規制の厳格化に大きくかじを切る。日本政府には、同盟国でもある米国と地球温暖化防止で歩調を合わせながら、双方にメリットを生み出す政策協調を打ち出すことが求められる。

 「交渉などがやりやすくなる一方、厳しい要求をしてくるという両面が考えられる」。日本政府関係者は、環境政策をめぐるバイデン政権との関係をこう見通す。オバマ政権時の閣僚が多く、日本とも太いパイプがあり、米国の意図が読みやすくなりそうだ。一方、環境政策を担う関係省庁には環境問題の専門家が多く配置され、厳しい協議や交渉も予想される。

 11月には国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)を控える。関係者は、「当面は、2030年の温室効果ガス削減目標と、それを裏付けるための制度を米国がどう打ち出してくるかがカギだ」と、新政権の出方を注視する。

 第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは、「バイデン氏が『国際社会での責任を果たす』ために、日本に対しても一層の自己革新を求めてくるだろう」と分析する。

 菅義偉(すが・よしひで)首相は「2050年温室効果ガス実質ゼロ」を打ち出し、政府は昨年末、具体的な取り組みを盛り込んだ「グリーン成長戦略」をまとめ、国内におけるイノベーションの加速に乗り出した。

 ただ、世界的に脱炭素ビジネスの競争が加速する中、米国も官民を挙げた国際競争に本腰を入れるとみられ、市場は激しさを増しそうだ。世界市場で日本が優位性を出せるか。また、環境や社会問題に対する企業の取り組みを投資判断に反映する「ESG投資」を日本に呼び込めるか。研究開発を含め米国と協力関係を深める一方、環境政策やビジネス面でいかに日本が実益を得るか。菅政権の役割は大きい。(那須慎一)

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