バイデン米政権は20日、トランプ前政権が離脱した地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」への復帰を国連に申請した。米政府は、環境政策で米経済を成長させる「グリーン・ニューディール」を今後前面に打ち出し、地球温暖化防止に積極的に取り組む。同盟国の日本は米国の環境政策とどう協調を図り、双方にメリットを生み出せるかが問われる。
バイデン新政権に対し、日本政府関係者は「交渉などがやりやすくなる一方、厳しい要求をしてくるという両面が考えられる」との見方を示す。そのうえで「当面は、2030年の温室効果ガス削減目標と、それを裏付けるための制度などをどう打ち出してくるかが日本にとっても重要になる」と指摘する。第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストも「バイデン氏が『国際社会での責任を果たす』ために、日本に対しても一層の自己革新を求めてくるだろう」と分析する。
日本は、昨年末に50年までの温室効果ガス実質ゼロに向けた具体的な取り組みを盛り込んだ「グリーン成長戦略」をまとめ、蓄電池や水素利用など環境技術の革新と普及促進に乗り出した。
一方、世界的に脱炭素ビジネスの取り組みが加速し、米国も官民を挙げて本腰を入れることで今後、市場の競争は激しさを増すとみられる。
その中で、日本企業が技術的な優位性を獲得するとともに、環境や社会問題に対する取り組みを重視する「ESG投資」の資金を呼び込むには、政策の後押しや世界に向けた情報発信などで政府の役割が大きい。
バイデン政権内にはオバマ政権当時の政策スタッフが多く、日本政府にとっては米国の意図が読みやすくなる面もある。米国と協力関係を深めながら、環境政策や技術研究などでいかに実益を取っていけるか。菅義偉首相のかじ取りが注目される。(那須慎一)