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熱を帯びる次世代電池の開発競争、本命は「全固体電池」 EV搭載に期待も (2/2ページ)

 すでに半導体や液晶、スマートフォンでは日本の地位が大きく低下している。

 電池も優位性が揺らいでいる製品の一つ。リチウムイオン電池の開発では旭化成の吉野彰名誉フェローがノーベル化学賞を受賞し、商品化でも1991年にソニーが世界に先駆けた。だが、車載用電池で現在トップに立つのは中国の寧徳時代新能源科技(CATL)。日本はパナソニックが2位につけてはいるものの、韓国勢にも押されているのが現状だ。従来の中国や韓国はコスト競争力を唯一最大の強みとしてきたが、近年は開発スピードや資金力でも日本を上回りつつある。

 このため日本政府は昨年12月、脱炭素化へのグリーン成長戦略に全固体電池の本格実用化を盛り込み、基本設計や新材料の検討などで官民の連携を強化する方針を打ち出した。

 自動車をめぐっては、日本政府が2030年代半ばに国内の新車をすべてEVなどの電動車に切り替える目標を掲げているが、達成には電池技術の進歩が不可欠。脱炭素化のためにも、早期の実用化が期待される。

 全固体電池は、すでに補聴器やワイヤレスイヤホンといった電力使用量が比較的少ない機器では採用が始まりつつあり、TDKや村田製作所といった電子部品メーカーが電池供給を拡大しようとしている。

 TDKは基板に組み込むタイプの電池を昨年2月から量産。現在は月3万個を生産しており、近く10万個に引き上げる計画だ。

 富士経済によると、全固体電池の世界市場は2019年時点で19億円にすぎないが、25年には567億円まで増える見通しだ。

 ただ、急速に拡大するのは自動車への採用が始まる20年代半ばから。30年には2778億円まで増加し、5年後の35年には2兆1014億円と実に8倍近くまで膨れ上がるとみている。(井田通人)

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