専欄

武漢封鎖から1年後の中国 実践した「四つの早い」

 元滋賀県立大学教授・荒井利明

 新型コロナウイルスの感染を制御するため、武漢市が突然封鎖されたのは昨年の1月23日だった。それから1年が経過した。中国は今、来月の春節(旧正月)、さらには3月の全国人民代表大会(全人代)を控えて、感染拡大への警戒を強めている。

 多くの国がいまなおコロナと悪戦苦闘している中、中国は初期の対応に誤りがあったものの、感染制御でいち早く成果を挙げ、昨年の国内総生産(GDP)は2.3%のプラス成長を実現した。

 中国は感染制御に関し、共産党の指導のおかげであり、中国の特色ある社会主義の優位性を示したと強調しているが、コロナとの闘いを記した昨年6月の「コロナ白書」は、「四つの早い」(早期の発見、報告、隔離、治療)を実践したと述べている。この「四つの早い」は感染制御で成果を挙げることができたキーポイントの一つで、その前提は早期かつ大規模で徹底した検査の実施にあり、その根底にはワクチンを待つことなく「コロナゼロ」を実現するとの強い政治的意思があった。

 今年に入って、河北省や黒竜江省などで感染の拡大が見られ、都市封鎖が実施された石家荘市(河北省)では1000万を超える全市民を対象にしたPCR検査が繰り返し行われた。検査体制に余裕のある江蘇省や浙江省などからそれぞれ100人余りの医療関係者が支援のため河北省に派遣されており、こうした全国規模の動員を素早くできることが、一党支配体制の「強み」と言えるかもしれない。

 また、広く指摘されているのは、「健康コード」に代表されるハイテクの活用による厳格な国民管理・監視システムの採用である。これにより行政当局は国民の位置情報や移動記録などを把握し、早期の発見、隔離に結び付けることができる。

 むろん、この中国型対策は個人の自由やプライバシーを厳しく規制することになる。政府は国民の生命・安全を最優先するとの大義名分によって正当化しており、国民の多くはこれを受け入れているものとみられる。

 例年であれば、春節前後、里帰りの「民族大移動」が見られる。だが、政府やメディアは里帰りを控えるよう国民に呼びかけている。

 昨年は5月に延期された全人代が今年は例年通り3月に開かれる予定である。全人代を「コロナゼロ」の状況下で開催することは、中国の制度の優位性を内外に誇示する上で重要な意義を持っているといえよう。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus