海外情勢

軍政復活 ミャンマーの国際的「孤立」再来も

 ミャンマー国軍がクーデターに踏み切った背景には、アウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相率いる国民民主連盟(NLD)政権下で進んだ求心力低下への危機感がある。議会招集初日にクーデターを起こすことで第2期スー・チー政権誕生を阻止した形だが、復活した軍事政権が国内外から支持を得ることは困難な情勢だ。

 「法律を守らない人がいるなら、憲法であっても廃止されるべきだ」。クーデターで実権を握った国軍トップのミン・アウン・フライン総司令官は1月27日、真意不明なこんな発言をしていた。国内には、選挙結果に不満を抱いていた国軍がクーデターを狙っているのではないか-との観測が急速に広がった。

 NLDは2015年総選挙で政権を握り、昨年11月の総選挙でも大勝。独立の英雄アウン・サン将軍の娘であるスー・チー氏人気は根強く、約半世紀にわたって国政を主導した国軍の存在感は低下していた。軍政に「腐敗」のイメージが付きまとっていたことも支持離れの原因の一つだ。

 NLD政権下で国軍は“抵抗勢力”と化した。スー・チー氏は少数民族武装勢力との和平推進を目指したが、主導権を握りたい国軍の全面協力は得られなかった。軍政下の08年に制定された憲法改正にも乗り出したが、国軍は反対した。

 NLDとの亀裂が深まる中、昨年の総選挙で国軍系政党、連邦団結発展党(USDP)が惨敗。クーデターへの直接の引き金となった。

 国軍は強引に全権を掌握したが、ヤンゴンなど都市部を中心にNLDへの支持は厚く、国内の反発が予想される。民主主義を否定する形での政権奪取劇には欧米諸国との関係悪化が避けられない。また、ミン・アウン・フライン総司令官は、イスラム教徒少数民族ロヒンギャを迫害した「主犯」と国際社会から批判されており、ジェノサイド(民族大量虐殺)を引き起こしたとして国際刑事裁判所(ICC)の訴追対象にすべきだとの声も上がる。

 約半世紀にわたった軍事政権時代、ミャンマーは国際的な孤立に陥り、経済的にも低迷した。軍事政権の再来は、「孤立の再来」にもつながりかねない。

(シンガポール 森浩)

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