海外情勢

露政権、ナワリヌイ氏を徹底排除 実刑判決で反体制派に試練

 ロシアのプーチン大統領を批判する急先鋒、ナワリヌイ氏が長期収監されることになり、露政権が欧米との関係悪化も意に介さず、反体制派の徹底排除を図る姿勢が鮮明になった。ナワリヌイ氏収監に抗議する行動がどれだけの広がりを見せるかが次の焦点だ。強力な指導者を失う形となる反体制派は、反政権運動の求心力を維持し続けられるかを試される。

 ナワリヌイ氏は昨年8月、旧ソ連開発の神経剤「ノビチョク」系の毒物で殺害されかかり、治療先のドイツから帰国した1月17日に拘束された。欧州連合(EU)や英国は毒殺未遂事件にプーチン政権が関与したとみて、露高官らに制裁を発動した。

 ナワリヌイ氏は2日の裁判所審理でプーチン氏について、「どれほど世界のリーダーを気取ろうとも、毒殺者として歴史に名が刻まれる」と痛罵。「ロシアの最良の存在は、国家を私物化する者たちと戦う人々だ。私もどんな境遇になろうと全力で戦い続ける」と国民を鼓舞した。

 ナワリヌイ氏の拘束をめぐっては、1月23日と31日に全国各地で大規模な抗議行動が起きた。同氏の団体がプーチン氏の「豪華宮殿」を告発したインターネットの動画は、19日の公開から10日間で1億回以上も再生された。今回の収監決定は人々の怒りに再び火をつける可能性がある。

 弁護士出身のナワリヌイ氏は政権高官らの腐敗をインターネット上で追及し、若年層を中心に支持を広げてきた。露独立系世論調査機関「レバダ・センター」のボルコフ副所長によると、ナワリヌイ氏の活動を支持する国民の割合は2013年の6%から20%まで増加しているという。

 同時に、反体制派の間でナワリヌイ氏の存在感は圧倒的であるため、同氏が獄中に留め置かれることで反政権運動が勢いを失うことも十分に考えられる。9月の下院選に向け、反体制派がどのような手法でプーチン氏の政治基盤を切り崩すかが注視される。

 2日の審理に先立ち、露メディアでは「政権側はこれ以上の国際的孤立や社会との断絶を避けるため、ナワリヌイ氏の収監を見送るのではないか」との見方も出ていた。プーチン政権はこうした観測を覆し、弾圧に突き進む方針を明確にした。今回の収監決定は、さらなる政治危機を生むことと紙一重である。(モスクワ 小野田雄一)

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