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新500円硬貨発行はいつ? 機器の改修作業が遅れ、コロナ禍が思わぬ飛び火

 【経済インサイド】

 財務省が令和3年度上期(4~9月)に予定していた新500円硬貨の発行を延期した。新硬貨に対応する現金自動預払機(ATM)や駅の自動券売機、自販機の改修作業が、新型コロナウイルス感染拡大による移動自粛の影響で遅れているためといい、新型コロナの影響が思わぬところにも飛び火した形だ。

 同省国庫課は「新硬貨の流通前に、ATMや自動券売機が新硬貨を本物と認識して、使用可能とする個々の機器の改修作業が必要」と説明する。偽造硬貨対策が欠かせないことはもちろん、発行された新硬貨がATMなどで使用できなければ、市民生活に大きな混乱が生じるためだ。

 財務省が新硬貨の発行を発表したのは一昨年の4月。新型コロナ感染が拡大した昨春以降、同課が券売機や自動販売機、ATMなどのメーカーからなる業界団体「日本自動販売システム機械工業会」に改修作業の進捗(しんちょく)状況を確認したところ、新型コロナの影響で遅れが出ていることが分かった。

 業界団体の説明によると、都内のメーカーが設置先の地方の企業に作業を打診した際に「県内に移動自粛要請が出されているので今、県外から作業に来るのは控えてほしい」と断られたケースなどがあったという。「テレワークを実施しており、対応できる社員がいない」と言われたメーカーもあった。

 ATMメーカー大手の沖電気工業(OKI)も産経新聞の取材に「お客さまの都合で、作業の時期を調整(延期)してほしいというケースはある」(広報)と明かす。

 同工業会によると、駅の自動券売機や駐車場の自動精算機、飲料、食品、タバコの自動販売機などの国内の設置台数は令和元年末時点で約414万台にのぼる。もともと500円硬貨が使えない機器も一定程度あるが、大半は改修が必要だ。

 作業は、主にメーカーの技術者が設置先を訪れて行う。訪問自体は許可しても大人数での作業は認めないといったケースもあったという。

 発行開始時期が間近に迫る中、今年1月には11都府県に2度目の緊急事態宣言が発令され、今後も作業の遅れが避けられない見通しとなったことから同省は発行の延期を決めた。新たな発行開始時期について、同課の担当者は「市中の受け入れ態勢を見極めながら、いたずらに遅らせず発行したい」と話す。

 初代の500円硬貨が世にお目見えしたのは昭和57年。岩倉具視の肖像が懐かしい500円札は平成6年に発行停止となり、12年には2代目となる現行の500円硬貨が登場した。硬貨のうちでも流通高は増加傾向にあり、かさばらず紙幣に近い感覚で使い勝手もよい小銭の“王様”として、今やすっかり暮らしに定着した感がある。

 発行されれば3代目になる新500円硬貨は、偽造を防ぐために現行の500円硬貨の色と銀色の2色を組み合わせたり、貨幣の縁の内側に小さな文字を加えたりしたのが特徴だ。

 重さは7・1グラムで現行の500円玉と比べると0・1グラムだけ重くなるが、大きさは直径26・5ミリで変わらない。図柄もほぼ同じで、慣れ親しまれた植物の「竹」「橘」「桐」をモチーフとしたデザインも初代から基本的に引き継がれている。

 一方で、新500円硬貨と同じ31年4月に、「令和6年度上期に発行する」と発表した1万円、5000円、1000円の新紙幣については、財務省は「現時点で変更はない」と強調している。(経済本部 永田岳彦)

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