自治体が管理する個人情報は事実上、その自治体だけでしか利用できないというのが実態だ。この縦割りが、医療だけではなく、大規模災害時の国や自治体、民間企業の支援連携がうまくいかない要因ともされ、専門家や経済界が長年にわたり、改善の必要性を訴えてきた。
新型コロナの感染者情報を共有するシステムとしては、厚労省が構築した「HER-SYS(ハーシス)」もあるが、本格稼働が遅れている。同システムは、医療機関や保健所が入力した検査結果や感染者の氏名、居住地などの情報を国、自治体が共有する仕組みだ。だが、多くの自治体では、外部の情報システムとのオンラインでのやり取りに制限があり、解除するには、審議会などの手続きが必要で、これが国への情報提供の遅れにつながっていると指摘される。
新型コロナは、昨年の全国民への特別定額給付金の支給作業などで、日本のデジタル化の遅れを浮き彫りにしてきた。マイナンバーを使ったワクチン接種が、個人情報を保護しながら、安心と安全を国民に効率的に提供できるか。菅政権のデジタル化は、ワクチン接種での2000個問題解消が最初の試金石となる。
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個人情報保護法の改正案のポイントは大きく3点。
まず第1が、現在3つある国の個人情報保護に関する法律を、行政機関個人情報保護法に一本化する。次に地方自治体の守るルールもこの行政機関個人情報保護法にそろえることで、国、各自治体が守るべき個人情報保護が共通化できる。3点目が個人情報保護委員会が監督・監視する体制とすることだ。
ただ、各自治体では「生活保護受給の有無」「性的少数者」など機微に触れる個人情報を取り扱うなど、国よりも取り組みを先行してきた歴史があり、国が一本化する際に、情報の範囲をどう設定するかが問われている。
また、現在は民間部門だけを監督対象とする個人情報保護委員会の陣容不足も懸念材料だ。(平尾孝)