専欄

米中関係の行方 肯定的なものから否定的なものへ

 米国のバイデン新政権にとって当面の最大の課題は、他の多くの国と同じく、新型コロナウイルスの感染制御だろうが、中国との間にどのような関係を築くかも重要な課題である。(元滋賀県立大学教授・荒井利明)

 中国の最高指導者、習近平は先月下旬、世界経済フォーラムのオンライン会合で演説し、約4200字の演説文の中に「多国間主義」が10回も登場した。演題も「多国間主義のたいまつで人類の前進の道を照らそう」というものだった。

 習近平が演説で強調したのは、イデオロギー的偏見を捨て、文化や制度の多様性を認め合い、多国間の対話と協力によってグローバルな課題を解決しようということだった。それはトランプ時代の対中政策の全面的な見直しを促したものである。

 だが、バイデン政権は対中強硬政策を変えることはないと表明しており、中国紙「環球時報」(1月27日付)の社説は、バイデン政権の「中国に対する認識と位置付け」はトランプ政権とほとんど変わらないと述べ、米国が同盟国とともに中国を封じ込めようとするのは「民主・共和両党の対中路線上の共通認識」と指摘して、「米中関係の厳しい冬の時代がもたらす種々の挑戦」に立ち向かわねばならないとしている。

 ただその一方、中国の発展のスピードが相対的に米国よりも速いこと、両国の総合国力のギャップが縮小しつつあることなどを指摘し、中国にとって戦略的に不利なわけではないとも述べている。

 バイデン政権はトランプ政権と同じく、中国を「戦略的競争相手」とみなしている。中国は米中関係が対話と協力の軌道に戻ることを望んでいるものの、関係改善が極めて難しいと判断し、持久戦を覚悟しているものとみられる。

 外相の王毅は共産党理論誌「求是」(1月16日号)に掲載された論文で、大国外交に関して、まずロシア、次いで欧州連合(EU)、3番目に米国を取り上げた。かつては米国を真っ先に取り上げるのが常だったが、米中関係の悪化と関係改善が難しいことから、取り上げる順番を変えたのだろう。

 むろん、中国にとって対米関係の重要性は変わらず、バイデン政権も米中関係は最も重要な2国間関係ととらえている。ただ「重要」の意味は今世紀の2000年代、10年代のブッシュ時代、オバマ時代とは異なり、肯定的なものから否定的なものへと大きく変化している。(敬称略)

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus