海外情勢

トランプ氏の弾劾裁判開始へ 16日にも評決

 【ワシントン=黒瀬悦成】トランプ米前大統領の支持勢力による1月6日の連邦議会議事堂の襲撃・占拠事件を扇動したとして、トランプ氏の責任を審理する上院(定数100)の弾劾裁判は9日午後1時(日本時間10日午前3時)に始まる。これに先立ち民主、共和両党の上院トップは8日、裁判の進め方で合意。早ければ16日にも評決が下される見通しとなった。

 新型コロナウイルスの追加対策などの審議を優先させたい思惑から、両党は「迅速な審理」を行うことで一致。民主党のシューマー上院院内総務によると、9日に始まる弾劾裁判ではまず、弾劾裁判をめぐる憲法の規定が大統領を退任したトランプ氏に適用されるかどうかに関し、最長4時間にわたり審理した上で採決を行うことにしている。

 採決では過半数の賛成で裁判が合憲と認められる見通し。ただ、上院では1月26日、弾劾裁判で陪審員役を務める上院議員100人が宣誓手続きを行った際、弾劾裁判は「憲法違反」として打ち切りを求めた動議に共和党議員50人のうち45人が賛成している。

 与野党が50対50の上院でトランプ氏を有罪とするには、共和党から少なくとも17人の賛成が必要。9日の採決で共和党からの賛成者が増えない場合、トランプ氏が無罪となる公算は一層大きくなる。

 弾劾裁判の冒頭陳述は10日正午から始まり、検察官役の民主党下院議員団9人と、トランプ氏の弁護団がそれぞれ2日間で最長16時間、計4日間で最長36時間にわたり陳述を行う。

 クリントン元大統領と、トランプ氏の1回目の弾劾裁判では双方に各24時間が与えられていた。

 その後、上院議員による最大4時間の質問、最終弁論などを経て評決を行う。双方のいずれかが証人申請を行えば裁判が長引く可能性もある。民主党議員団はトランプ氏に証人として出廷を求めたが同氏の弁護団から拒否された。

 民主党議員団とトランプ氏の弁護団は8日、それぞれ書面を提出。議員団は、トランプ氏が1月6日の集会で「死ぬ気で戦わなければ国を失う」などと述べて支持勢力に議事堂襲撃を扇動したと改めて主張し、同氏の行動に「釈明の余地はない」と強調した。

 これに対し弁護団は、トランプ氏の発言に支持勢力を扇動する意思はなかったと主張し、弾劾訴追決議は米憲法で保証された同氏の言論と思想の自由を侵害するものだと主張した。

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