海外情勢

G7再結束に向けて不透明感も ワクチン分配、中国対応で欧米間に微妙なずれ

 【ロンドン=板東和正】先進7カ国(G7)の首脳が19日に開いたオンライン首脳会議(サミット)は、「米国第一」を掲げたトランプ前政権期で亀裂が生じたG7の再結束を宣言する場となった。しかし、途上国への新型コロナウイルスワクチンの供給や中国の対応などをめぐり、欧米の足並みが完全にそろうかどうかは不透明だ。

 「米国の政権交代で多国間主義が強化された」

 ドイツのメルケル首相は19日、首脳会議終了後の記者会見でそう述べた。国際協調路線を掲げるバイデン米大統領の下、G7の結束回復に期待を示した形だ。

 今回の首脳会議では、議長国である英国のジョンソン首相が「全ての国が安全になるまでは、どの国も安全ではない」と宣言し、途上国へのワクチン分配で連携する方針を表明。ワクチンを共同購入して途上国にも分配する国際的枠組み「COVAX(コバックス)」でG7の支援は総額75億ドル(約7900億円)に達した。ただ、メルケル氏は、G7首脳が途上国に供給するワクチンの割合や時期について協議しなかったと明かした。

 途上国への分配をめぐっては、フランスのマクロン大統領は首脳会議に先立ち、米欧が保有するワクチンの最大5%を途上国に供与すべきだと提案した。しかし、英政府は、国民の接種を終えていないため「途上国にワクチンを供給する量や時期を明言するのは難しい」(与党・保守党のクレバリー議員)との立場を示す。米政府当局者も米メディアに、バイデン氏は米国民への接種に集中していると指摘した。

 ワクチン問題に詳しい英専門家は「G7メンバー国はワクチンの保有量や人口が異なり、途上国への分配の議論で亀裂が生じる恐れがある」と予測する。

 中国の対応でも米欧間では温度差がある。

 バイデン氏は4日の外交政策演説で、中国を「最も手ごわい競争相手」と位置づけ、中国による経済分野での不当行為と対決する姿勢を強調した。一方、欧州連合(EU)は中国外交で「米国の経済デカップリング(切り離し)には付き合わない」というシグナルを送る。EUは昨年末、企業が互いに進出する際のルールを定める投資協定の交渉で中国と大枠合意した。欧州各国の中国への経済依存度は高く、2020年に中国が米国を抜いてEU最大の貿易相手国となった。

 世界の首脳や閣僚らが国際情勢を議論する「ミュンヘン安全保障会議」のイシンガー議長はドイツメディアに、欧米の中国に対する考えは一致していないとの認識を示し、EUの首脳らがこの問題の解決に向けて取り組むべきだと主張。欧米が中国の対応で同じ立場を示せなければ「(欧米間で)衝突が絶え間なく発生する」と警告した。

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