未来への羅針盤

エステートテクノ、円滑な流通に一役

 不動産リスクをAIで可視化

 戸建てであろうと集合住宅であろうと、不動産は一生に一度の大きな買い物。ただ実際に購入した後、住んでみたら「こんなはずじゃなかった」ということが意外と多い。不動産と技術を融合させて新たなビジネスを生み出す不動産テックベンチャー、エステートテクノロジーズ(東京都渋谷区)が開発したマンション物件のリスク情報可視化サービスなら、そうした「見込み違い」を減らせるかもしれない。

 治安など6項目評価

 3月上旬から同社ホームページ上で提供を始める新サービス「Dr.Asset(ドクターアセット) マンションリスク」は、物件名を検索すると、物件の所在地周辺の災害や犯罪発生リスクを5段階で表示する。自治体や警察などが既に開示している膨大なリスク情報をデータベース化しており、それを基に自社開発した人工知能(AI)を使い、判定する。治安、地震、水害、育児、生活、相場価格といった6つの評価軸もあり、これを掛け合わせた総合判定も行う。

 治安では警察署が電子メールのプッシュ通知などで知らせている犯罪や不審者の発生件数や内容を基にリスクを評価する。また地震では、国土交通省国土地理院の活断層図や自治体などのハザードマップなどを参考にしている。

 マンションを資産として購入するケースが多いことから、生活の評価軸では、自治体などが公表している数十年先の人口動態予測なども織り込んでいる。

 社長兼最高経営責任者(CEO)の沢博史氏は大手電機メーカーや商社などを経て、2009年にビッグデータの収集や調査分析を手掛けるデータセクションの社長に就任。その後、19年3月にエステートテクノロジーズを創業した。

 情報開示を促進

 かつて、沢社長はマンションを購入しようとした際、不動産会社から物件に関するリスクについて思うような説明が得られなかったことがあったという。例えば、中古マンションなら、どのくらいの修繕費の積み立てがあるのか。また前の入居者が支払った修繕費はそのまま引き継がれるのかといったことも、実は購入時の重要な判断基準になるが、購入希望者が質問しない限り、不動産業者は決して答えない。リスク情報を開示することで売買契約に至らなくなることを恐れているからだ。

 そもそも新築であれ中古であれ物件の価格が適正かどうかを素人が判断するのは難しい。

 「リスクに関する情報が不十分で価格に疑念を抱く状況では、物件の購入に慎重にならざるを得ない。物件のリスクに関する一元的な情報サイトがあれば」(沢氏)。これが起業の出発点となった。

 マンションリスクで物件名を検索すると、リスク情報だけでなく、物件を扱っている不動産業者も表示される。不動産業者から紹介料を受け取ることで、サイトの収益確保を図る。

 近年の相次ぐ豪雨災害を機に、昨年8月からは不動産契約前の重要事項説明の中で、浸水などの水害発生リスクを盛り込むことが義務化された。物件購入者が知るべきリスクは増えているものの、個人が調べるには時間と手間がかかるのがネックだ。

 かねてから中古物件の場合、物件によって資産価値の下がり方がまちまちなため、住宅ローンが組みにくく、物件の流通を阻害しているとの指摘もある。新サービスが購入のハードルを下げることにつながれば、中古も含め物件の円滑な流通に一役買うかもしれない。(松村信仁)

【会社概要】エステートテクノ

 ▽本社=東京都渋谷区千駄ヶ谷4-11-9  千駄ヶ谷マンハイム302号

 ▽設立=2019年3月13日

 ▽資本金=5000万円

 ▽従業員数=10人

 ▽主な事業=ビッグデータや人工知能(AI)技術を活用した不動産仲介など

 ▽経営理念=AIの力で、不動産取引の世界にイノベーションを

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