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高卒生の求人、コロナで減少 来年度以降に暗雲

 新型コロナウイルスの感染拡大が、高校生の就職活動に影を落としている。昨年3~5月の臨時休校を考慮し、十分な準備期間を設けるために採用選考の解禁日が全国的に1カ月延長されたが、求人数は減少。内定率は8割を超えるなど昨年と大差ないが、就職を断念し進学するケースもあるとみられる。検討が進められてきた就活ルールの見直しにも影響を与えそうだ。

 来年度悪化の恐れ

 「鉄道や製造ではコロナの影響で求人が減った。本当に行きたい就職先があっても、行けなかった子もいる」。大阪市立泉尾工業高校で進路指導を担当する阿津坂(あつさか)理沙教諭は苦しい表情を浮かべた。

 例年は履歴書の記入方法や面接の練習などの就活指導は夏休みに行うが、今年度は臨時休校の影響で夏休みが短縮に。このため、授業と並行して実施し、急遽(きゅうきょ)オンライン面接の対策も指導したが、10月の選考解禁後、各自が1回目に臨んだ選考での内定率は75%で、前年の91%から大きく減少した。

 現在は大半の生徒が内定しており「今年度の3年生はなんとか乗り切った。ただ、怖いのは来年度以降」と同教諭。同校では1年生の夏ごろから企業説明会に出席させるなど、早めのスタートで対応する予定だ。

 商業高校の神戸市立神港橘高校(神戸市兵庫区)によると、今年度の同校への求人数は3割減。進路指導部の阪裏利博教諭は「すでに一部の企業から、来年度の求人は難しいと言われている。厳しい競争に勝てる力をつけさせなければ」と話した。

 ルール変更、凍結も

 新型コロナは、来年度以降の高校生の就活ルールにも影響を及ぼしそうだ。大阪府では来年度から就活ルールを見直す方針だったが、コロナの影響を受けて当面、現行のルールを続けることを含めて検討している。

 高校生の就職活動は、企業から学校に求人が持ち込まれる「指定校求人」と、公開された情報をもとに生徒が企業を選んで応募する「公開求人」などがあり、多くの生徒は指定校求人を活用。選考開始時に一度に応募できるのは1社のみと限定するルールが慣例化し、「一人一社制」と呼ばれる。

 一人一社制は、内定辞退と学業への影響が少ないメリットがある一方、早期の離職率の高さや職業の選択肢を狭めているといったマイナス面の指摘も。昨年2月、国は必要に応じて見直すよう都道府県に呼びかけ、これまで一人一社制を取ってきた大阪府は来年度から、希望する生徒については一部の公開求人で選考開始日から複数社への応募ができる仕組みを導入する方針だった。だが1月になって、この見直しを凍結する案が浮上。近く、府教委や経済団体などによる会議で決定する予定だ。

 背景には、コロナによる求人数の減少などを受けた学校側からの「この状況で制度を変えると就職できない生徒が出かねない」との声がある。ある高校の進路指導担当者は「大学生と同じような公開求人での就職活動は、6時間目まで授業のある高校生には難しい。特にコロナ下では不安が大きい」と話していた。

 「売り手市場」一変

 高卒生の将来性や成長性に期待した採用の動きは近年、高まる一方だった。特に平成23年度以降は右肩上がりで求人数が伸び続ける「売り手市場」だったが、今年度は新型コロナの影響を受けて約10年ぶりの求人減となりそうだ。

 文部科学省のまとめによると、今年3月に卒業する高校生の昨年11月末現在の内定率は80・4%。前年同期比3・2ポイント増で、新型コロナによる大きな影響はないようにみえる。

 ただ、就職が決まらないために進路を就職から進学に切り替えた生徒もいるとみられる。

 一方で、企業の求人数は大きく減少。厚生労働省によると、ハローワークを通じた高校新卒者の求人は、昨年10月末現在、前年度比20・7%減で、内定者数も減少。特に東京都や神奈川県、京阪神の減少幅が大きかった。

 産業別の求人状況では、「宿泊業・飲食サービス業」が前年度比45・9%減で、娯楽業や製造業など新型コロナの影響の大きい業種の求人が軒並み減少している。

 厚労省の担当者は「就職を希望する高校生にとって、選択肢が昨年度よりも減っていることは確かだ」と話している。

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