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中国で急速に進む少子化 政策転換の効果、極めて限定的に

 中国では高齢化とともに少子化が急速に進んでいる。中国の人口政策は2016年に大きく変化し、「二人っ子政策」が全面的に実施された。全ての夫婦が子供を2人まで持つことができるようになったのである。(元滋賀県立大学教授・荒井利明)

 この政策転換によって、出生数がかなり増え、15年に1655万人だった出生数は16年には1786万人に、17年には1723万人になった。だが、18年の出生数は1523万人に減り、19年はさらに減って1465万人となった。一時的に出生数が増えたものの、政策転換の効果は極めて限定的だったのである。

 20年の出生数(届け出済み)は12月31日現在で1003万5000人で、19年の同日と比べると14.89%の減少となった。オンライン旅行会社の創業者で人口問題を研究している梁建章・北京大学教授は、既に公表されている一部の都市のデータをもとに、合肥市(安徽省)の20年の出生数は23%も減少し、温州市(浙江省)も19%減少しており、全国の最終的な出生数は1250万人前後になると予測している。

 中国の総人口は19年末の時点で14億人をわずかに超えたが、増加ペースは極めて緩やかになっている。国連の人口予測によると、中国の総人口は30年ごろにピークを迎えるが、梁教授は第14次5カ年計画期間中(21~25年)にピークを迎え、減少に転じるとみている。出生数の減少が急激に進み、国連予測よりも早くピークを迎えるとの見解である。

 梁教授は、二人っ子という規制を撤廃し、出産の抑制から奨励へと政策を転換し、第14次5カ年計画期間中に出産を奨励する政策を打ち出すべきだと主張している。

 たとえ奨励へと政策転換しても、出産適齢期の女性が急激に減っている上、若者たちの意識が変化し、「結婚しない」「出産しない」傾向が強まっているため、奨励策にどれほどの効果があるかは不明である。効果はあまり期待できないとみるべきだろう。

 専門家は、少子化を緩和するためには、子供を産み育てる親の負担を軽減することが不可欠で、それにはまず教育と住まいに関わる経済的負担を軽減すべきだとしている。

 中国では昨秋、建国以来7回目の国勢調査が10年ぶりに実施された。調査結果は4月に発表される予定で、その結果によって、少子化の実態がより明確になるだろう。

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