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投票率も低下、コロナ禍の首長選は「現職優勢」? 有事は安定重視?

 【深層リポート】埼玉発 新型コロナウイルスの感染拡大後、埼玉県の首長選で「現職優勢」の傾向が顕著になっている。前回の緊急事態宣言が発令された昨年4月以降、現職に新人が挑む構図になった全ての首長選を現職が制しているのだ。全国的な動向とは必ずしも合致しない選挙事情の背景には何があるのか。

 駅立ちも限定

 「有権者に『若さ』『パワー』といった強みをアピールし切れなかった」

 1月24日投開票の埼玉県川越市長選に立候補した新人で元市議の川目武彦氏(43)は、現職の川合善明氏(70)=自民、公明推薦、社民支持=との一騎打ちに敗れた選挙戦をこう振り返る。

 新型コロナウイルス対策強化などを公約に掲げた川目氏は当初、多くの有権者と触れ合うことができる駅前での演説に力点を置いて戦うつもりだった。ところが、1月7日の緊急事態宣言再発令によって戦術の練り直しを迫られた。

 「宣言が出ているのに駅前に立ち続ければ、公約のコロナ対策と矛盾する行動になる。結果として駅立ちの時間帯を限定せざるを得ず、有権者に政策を訴える機会が減ってしまった…」

 川合氏も集会の規模を縮小するなどの対応をとったが、川目氏に約1万票の差をつけて4選を果たした。川合氏を応援した県議は「有権者の最大の関心事はコロナ対策だ。これまで取り組んできた現職の実績が選挙戦で最大の強みになった」と明かす。

 盛り上がりにくい

 埼玉県内で昨年、現職と新人が対決する構図となった首長選は坂戸市長選(4月12日投開票)、美里町長選(同26日投開票)、新座市長選(7月5日投開票)、富士見市長選(同26日投開票)の4つで、いずれも現職が当選した。平成12年から令和元年までの20年間をみると、同様の構図の首長選全てを現職が制した年は平成28年だけだった。

 来年に改選を控える県内の市長の一人は、新型コロナウイルス感染拡大と「現職優勢」の潮流は無関係ではないとみる。

 「有事の際は政策の継続性や安定感を求める声が高まる上、コロナ禍では選挙戦自体が盛り上がりにくい。現職に有利に働く要素がてんこ盛りだ」

 地元への関心薄く

 ただ、県外を見渡すと、この傾向は必ずしも普遍的なものではないようだ。昨年に全国で行われた市長選のうち、新人が現職を破った選挙は21・2%(25市長選)で、前年の17・0%を上回った。

 全国と埼玉県の傾向の違いの背景として、考えられる要素の一つが投票率だ。

 新人が勝利した昨年の全国25市長選のうち約7割は前回よりも投票率が上昇していた。対照的に、埼玉県内の4市町長選は全てで投票率が低下し、うち新座市長選を除く3市町長選は過去最低となった。

 埼玉大の松本正生(まさお)教授(政治意識論)は「埼玉県には東京都内に通勤する『埼玉都民』が多い。このため、地元への関心が薄く、投票率も低くなりやすい土壌がある。コロナ禍で有権者が『選挙どころではない』状況に追い込まれた結果、投票率の低下が加速し、新人の苦戦につながったのではないか」と分析している。

【新型コロナウイルス感染拡大と地方選挙】 昨年4月の緊急事態宣言発令を受け、公明党は地方選挙を延期する特例法の制定を訴えたが、実現の機運は高まらなかった。自民党の二階俊博幹事長は同5月、公明党の斉藤鉄夫幹事長(当時)との会談で「現状では厳しい」と伝えた。海外では、英国やポーランドで感染拡大の影響によって選挙が延期されたケースがある。

【記者の独り言】 「低投票率は必ずしも悪ではない。地域が大きな問題を抱えていない証だ」。埼玉県内のある首長は胸を張って言い切る。とはいえ、選挙が注目を集めなければ、地元の問題が認知される機会も失われる。新型コロナウイルス対応で首長の手腕が問われる今だからこそ、自らの持つ一票をしっかり投じたい。(竹之内秀介)

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