国内

対中抑止、メッセージに限界…求められる具体的行動 日米2プラス2

 16日に発表された日米安全保障協議委員会(2プラス2)の共同文書には、中国海警法への「深刻な懸念」が明記された。特定の国の法律を名指しするのは異例の措置で、強い危機感の表れといえる。ただ、外交メッセージだけで中国が尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺から手を引く可能性は少ない。現状変更の試みを阻止する具体的行動が求められている。

 「インド太平洋地域の戦略環境は、以前とは全く異なる次元にある」

 茂木敏充外相は2プラス2後の共同記者会見でこう述べた。ブリンケン米国務長官も「中国が威圧的になってくるときは、それを押し戻す」と明言した。岸信夫防衛相とオースティン米国防長官も中国を名指しして脅威との認識を示した。

 茂木氏は会談前から「一番時間を割くのはチャイナだ」と強調していた。バイデン政権は中国を「最大の地政学的試練」と位置づけ、東アジアで軍事的不均衡が進むことに憂慮を隠さない。中国海警法が共同文書に明記されたことを、外務省幹部は「自然な流れ」と歓迎する。

 とはいえ、外交上の「深刻な懸念」は必ずしも強い表現とはいえない。軍事攻撃やテロに対して使われる「断固非難」や北朝鮮の核実験に向けられた「極めて遺憾」などに比べれば批判の度合いは落ちる。日本政府関係者は「中国の行動は看過できないが、必要以上に過度な言動をとれば事態の悪化を招く」と語る。

 今回の日米のメッセージが、実際に中国の自制につながる可能性は低い。海警法への深刻な懸念は今年2月の日米外相電話会談でも共有されているが、中国海警局は尖閣周辺での活動を継続しているのが実情だ。自民党からは「メッセージでは限界がある。新たな行動に対しては新たな行動が必要だ」との声が上がる。

 こうした懸念は日米も共有する。2プラス2では自衛隊と米軍による実践的な共同訓練の充実や、米国が進める「世界的な戦力態勢の見直し」で緊密に連携する重要性を共有した。岸氏は周辺に「言葉だけでなく、行動で日米が一体だということを示す必要がある」と話した。(石鍋圭)

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