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7年後に「破産」も…古都・京都、実は崖っぷち財政 コロナが追い打ち

 日本を代表する観光地・京都市。世界的に知られる華やかな古都としてのイメージの一方で、市財政は火の車だ。そもそも慢性的に収支不足だったが、新型コロナウイルス禍で頼りにしてきた観光収入が激減し、収支はさらに悪化。市は支出削減のため、新年度から主催・共催する全イベントを見直し対象にすることを決めた。7年後には企業の「破産」に例えられる財政再生団体に陥る可能性もあり、京都市財政は崖っぷちに追い込まれている。(秋山紀浩)

 「5年後に、『また(財政改革が)できなかった』の繰り返しでは何もならない」。今月開かれた京都市議会特別委員会で、市議の一人が門川大作市長に対し、財政再建策への決意表明を迫った。門川市長は「今後は『後がない財政危機』だ」と言葉少なに語った。

 年間約5千万人の観光客が訪れ、国内外の調査では毎年高い評価を集める京都。平成30年に自主財源として宿泊税を導入したこともあり、令和元年度には観光需要に支えられ、市税収入は過去最高の2770億円となった。ただ、財政の台所事情は非常に厳しい状態が続いてきた。

 地下鉄事業で巨額借金

 大きな要因は、バブル期の市営地下鉄東西線の建設など大規模公共工事の借金返済があるにもかかわらず、昭和時代から続く福祉や医療、子育て支援などの独自施策を継続したことだ。しかも、本来ならば運賃などの収入で返済すべき地下鉄事業の巨額の借金を長年にわたって一般会計で肩代わりし、財政逼迫(ひっぱく)に拍車がかかった。地下鉄事業は赤字が続く。

 「貯金」にあたる財政調整基金は20年も前に枯渇。将来の借金返済に備えて積み立てている公債償還基金を取り崩す「禁じ手」と呼ばれる手法を連発し、見せかけの収支の均衡を保ってきた。

 7年後に「破産」も

 観光需要に何とか支えられてきた市財政に追い打ちをかけたのがコロナ禍だ。市観光協会によると、昨年の市内主要ホテルの延べ宿泊客数は253万8千人で前年比61・2%の大幅減となり、特に外国人は約9割減の36万5千人。企業業績は悪化、消費も大きく落ち込んだ。

 この結果、令和3年度当初予算案では500億円もの収支不足が生じる見通しで、財政難が一気に表面化。市は円山公園の音楽イベントなど主催・共催の全144件の見直しのほか、職員削減や職員本給最大6%カットなどの行財政改革で215億円の財源を捻出するとともに、公債償還基金を過去最大の181億円を取り崩すことに。しかし、このペースでは8年度に基金が底を突く見通しで、9~10年度に財政再生団体に転落する恐れがある。

 市は、放置自転車の撤去保管や印鑑登録証再交付の手数料値上げも提案するが、市民からは反発の声も。自営業の男性(42)は「財政危機の原因をコロナに押し付けて、過去の怠慢から目を背けている」と憤る。慢性的な財政難に対し、「国際的にも京都の知名度は高いが、実態は恥ずかしいばかり。こうなる前に軌道修正すべきだった」と話している。

 厳しい財政、全国自治体でも

 総務省によると、令和3年度の地方税収(地方譲与税含む)は、コロナによる企業業績の悪化や消費の落ち込みで、前年度の計画段階と比べて3兆6千億円減の計39兆9千億円と大きく落ち込む見通しだ。

 京都市の予算規模は全会計総額で約1兆7千億円と、神戸市や福岡市と近く、政令市20市の中では上位6番目ほどに位置する。にもかかわらず、資金繰りの危険度を示す「実質公債費比率」(平成30年度、11・4%)、将来財政を圧迫する可能性を示す「将来負担比率」(同、191・2%)で、いずれも同年の政令市平均(実質公債費比率7・7%、将来負担比率87・1%)を上回る。

 ただ、大阪市や神戸市などこれらの数値が比較的低い自治体も痛手を被っている。

 大阪市はともに政令市20市の中では低い方だ。だがコロナ禍で法人市民税が大きく落ち込み、令和3年度一般会計当初予算案で、228億円の収支不足が生じた。不足額が200億円を超えるのは平成27年度以来で、市は土地売却や財政調整基金で補填(ほてん)する。

 2つの指標が政令市平均を下回る神戸市も、コロナ禍で財政状況が悪化。市は建設を計画していた海上展望施設(高さ約30メートル)の計画中止を決めた。事業費は40億~50億円と試算され、県と市で折半する予定だったが、市が県に中止を申し入れた。

 国は3年度の地方交付税を増額する方針で、自治体の裁量で使える財源は一定確保される。ただ、第一生命経済研究所の星野卓也・副主任エコノミストは「経済が上向きになっても税収は1、2年では戻らず、財政難の自治体は増える可能性がある。もともと財政難の場合は、より切迫した状況になり、独自施策の実施が難しくなるだろう」と指摘している。

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