海外情勢

カンボジアでコロナ予防法施行、市中感染歯止めへ 違反者に厳罰

 カンボジアにおける「新型コロナウイルス感染予防法」が11日、健康診断のため中国に滞在中のシハモニ国王に代わりサイ・チュム上院議長が署名し、即時施行された。隔離指示への違反などに対する罰金や禁錮刑が盛り込まれている。

 「2・20事案」と呼ばれる市中感染の拡大を受けて急ぎ起草された感染予防法は、2月28日に閣僚会議で承認され、上下院で審議された。6章18条から成り、新型コロナだけでなく、他の「死をもたらすような深刻な感染症」にも適用される。国民の生命を守り、公衆衛生と秩序を維持し、感染症が社会・経済活動にもたらす影響を最小限にとどめることを目的に施行された。

 初の死者発生

 「2・20事案」の発端が、カンボジアに入国した中国人4人が隔離中のホテルから警備員に賄賂を渡して抜け出したこととされているため、隔離や予防措置の違反者に厳しい罰則が設けられた。

 同法では、感染予防を目的とした保健対策として、マスク着用やソーシャルディスタンス(社会的距離)などが政令によって義務化されること、移動の制限や禁止、集会や会議の開催制限、ビジネス活動の制限など幅広い行政措置が取られる可能性があることなどを定めている。

 罰則規定を設けており、刑事罰のほか、ビジネス免許の取り消しや廃業命令など厳しい行政処分も含まれている。具体的な罰則としては、隔離の指示に背いて逃亡した場合は最長3年の禁錮刑と最高2500ドル(約27万円)の罰金。陽性者が治療中の医療施設から逃亡した場合は最長5年の禁錮刑。また、そのことにより新たな感染者が発生した場合、禁錮刑は最長10年となる。

 この法律に基づき、カンボジア保健省は3月12日、公共の場所などにおいてマスク着用、ソーシャルディスタンスを保つことを義務付ける政令を出した。違反した場合は、警告のうえ、最高250ドルの罰金が課せられる。宗教やスポーツの集会・会議などでも、この予防策が実施されていない場合は、主催者に最高1250ドルの罰金が課されるという。

 カンボジア国内では、2月20日にプノンペンで市中感染が確認された。感染者は約1カ月経っても減少する気配がなく、3月18日現在の市中感染陽性者数は1025人。

 そのうちカンボジア人の男性1人が同11日に死亡した。カンボジアとしては、昨年1月末に初の新型コロナ陽性者が確認されて以来、初めての死者となった。

 また、市中感染による感染者の所在地はプノンペン以外の10州にも広がった。保健省は、感染者が確認されたアパートやホテルなどを即時封鎖し、住民には2週間の隔離を命じている。このため、プノンペン都全体ではロックダウン(都市封鎖)にはならなかったが、一時は都内70カ所以上が封鎖された。

 地方では市や村、地域が封鎖されるケースも相次いでおり、プノンペンに次いで多くの感染者が確認されていたプレアシアヌーク州のシアヌークビルは緊急車両や物資輸送以外の往来が禁止された。また、ベトナム国境でカジノ街のあるカンダル州コットム郡では200人近い感染者が出たことから、郡内全ての事業の営業停止命令が出された。

 事実上の活動制限

 今回の市中感染がカンボジア24州都のうち半分近くに広がったことを受けて、感染者が確認されていない州でも、州境に検問を設けて通行を制限しているとの情報もある。カンボジア全体での移動制限は発令されていないが、フン・セン首相は「結婚式などの集会やイベントは延期し、不要不急の外出を控えるように」との声明を出しており、事実上、活動制限がある状態だ。

 カンボジアは4月14日からの3日間、カンボジア独自の正月を迎える。カンボジア人にとっては最も重要な祝日であり連休となるが、昨年は新型コロナ感染防止のため連休が返上され、さらに州をまたいでの移動が禁止された。「2・20事案」を発端とする市中感染が収束しなければ、今年も連休が返上されるのではないかという憶測が出ている。

 3月18日現在、カンボジア国内の新型コロナ感染者は累計1541人。内訳はカンボジア人760人、中国人530人、ベトナム人82人、フランス人45人、マレーシア人14人、米国人13人、タイ人10人などとなっている。(カンボジア邦字誌「プノン」編集長 木村文)

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