真山仁の穿った眼

「財政赤字」が加速していることへの危惧 ポストコロナで後れを取る可能性 (2/2ページ)

真山仁
真山仁

 『オペレーションZ』で鳴らした警鐘

 手前味噌で恐縮だが、こんな異常事態を放置していたら、若者たちに将来、大きな負担を強いると考えて、財政破綻の警鐘を鳴らすとともに、「野蛮な財政再建」と名付けた方法で、財政赤字解消に切り込んだ小説『オペレーションZ』を2017年に発表した。

 不測の事態が起きた時に、財政的な余裕がなければ、日本が国家破綻するのは目に見えている。だから、まだ体力のあるうちに、大胆な財政再建を行うべきだというのがテーマだった。

 同作で懸念していた“不測の事態”が、昨年起きた。

 新型コロナウイルスの蔓延だ。世界各国が、莫大な国家予算を投じてコロナ対策を行っているが、カネをいくら投入しても、収束の兆しが見えない。

 まさかに備えて財政再建を行っていたドイツなどは、ここぞとばかりに予算を投下した。トランプ大統領が政治を無茶苦茶にしたと言われるアメリカですら、日本より遙かに健全な財政状態で、危機と闘っている。

 無論、日本も他国に劣らない対策は講じている。

 しかし、元々抱えていた財政赤字を考えると、いずれポストコロナ時代で、他国に大きく後れを取る可能性がある。

 こうした警鐘を鳴らすと、「日本は絶対に破綻しない。そんな警鐘は、無知な者のブラフだ」という意見が、専門家と称する人たちから出てくる。

 ここで、その議論をするつもりはない。だが、いつでも動かせるフローとしてのカネが、圧倒的に不足していることは、紛れもない事実であり、赤字国債の額がこのまま膨れ上がれば、いつか、買い手側がギブアップする可能性は確実に高くなるのだ。

 日本人は、元々「まさかの時に備える」ことを、「常識」としてきた。 

 そして、将来世代の負担を少しでも軽くする行為は、人間としてどころか、全ての生き物が、「当たり前」に行っている。

 なのに、日本はその問題を先送りし、危機を高めている。

 コロナ禍という将来展望が見えない今だからこそ、改めて、日本の財政の不健全性について、真剣に議論し、考える必要がある。

昭和37年、大阪府生まれ。同志社大学法学部政治学科を卒業後、新聞記者とフリーライターを経て、企業買収の世界を描いた『ハゲタカ』で小説家デビュー。同シリーズのほか、日本を国家破綻から救うために壮大なミッションに取り組む政治家や官僚たちを描いた『オペレーションZ』、東日本大震災後に混乱する日本の政治を描いた『コラプティオ』や、最先端の再生医療につきまとう倫理問題を取り上げた『神域』など骨太の社会派小説を数多く発表している。初の本格的ノンフィクション『ロッキード』を上梓。最新作は「震災三部作」の完結編となる『それでも、陽は昇る』。

【真山仁の穿った眼】はこれまで小説を通じて社会への提言を続けてきた真山仁さんが軽快な筆致でつづるコラムです。毎回さまざまな問題に斬り込み、今を生き抜くヒントを紹介します。アーカイブはこちら

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