専欄

アラスカで開かれた米中高官協議 「米中冷戦」のゴングは鳴ったのか

 米アラスカ州で開かれた米中高官協議は、両国の外交史上でも、まれにみる激しさだった。いよいよ本格的な「米中冷戦」のゴングが鳴ったのだろうか。中国はトランプ政権時代に、貿易・投資面を中心に相次ぐ攻撃を受けたが、できるだけ冷静に対応しようと努めていたふしがある。バイデン政権になってからは、しばらく様子見だったが、予想以上に対中政策が厳しいと感じ始めていた。トランプ政権ではほとんど持ち出さなかった人権問題に遠慮なく踏み込んでくるし、日欧豪などとの連携にも積極的だからだ。(拓殖大学名誉教授・藤村幸義)

 米中高官協議は、そんなタイミングで開かれた。双方は事前に冒頭発言は2分以内に抑えるとの打ち合わせをしていた。メディア向けの冒頭発言は通常ならば、当たり障りのない内容で、短時間で終わるはずだった。

 ところがブリンケン米国務長官は発言時間こそ2分を少し超えた程度だったが、冒頭から「新疆ウイグル自治区、香港、台湾に対する行動、米国へのサイバー攻撃、同盟国への経済的な強制行為に関するわれわれの深い懸念についても提議する」などと切り出した。

 これに大いに刺激されたのが楊潔チ・中国共産党政治局員だった。10分を大幅に超える発言を、通訳もさせずに続けた。このため米国側は、記者団をもう一度呼び寄せて、2度目の発言を行う。中国側も、米国がやるならと、記者団を再びとどまらせて、再度の発言を行った。

 中でも「あなたたちは上から目線でわれわれと話す資格はない。中国人はこの手はくわない」など、楊政治局員の強気の姿勢が目立った。なぜ米国側は、楊政治局員の発言が長すぎると、途中で遮らなかったのだろうか。

 中国のネット上では、中国が堂々と米国に「不(ノー)」をいった、と楊政治局員の発言を賛美する書き込みであふれている。両国の女性通訳を比較し、「中国側は美人で、しかも訳し方は的確だった。一方、米国側は髪の毛を紫色に染めていて、訳し方もオーバーだった」というコメントも多かった。

 こうした強気の背景には、中国が新型コロナウイルスの流行からいち早く立ち直り、自信を深めていることがある。国内総生産(GDP)が米国を追い抜く時期も早まりそうだ。中央指導部内では「東昇西降」(東が昇り、西が降りる)が合言葉になっているとも伝えられているが、本格的な米中冷戦となれば、中国が失うものも多いことを知るべきである。

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