海外情勢

WHO調査団が武漢報告書、中間宿主介した感染「可能性高い」 研究所流出は否定

 【ロンドン=板東和正】中国湖北省武漢市で新型コロナウイルスの起源解明に向けた調査を行った世界保健機関(WHO)国際調査団は30日、調査内容をまとめた報告書を公表した。報告書で調査団は、「中国科学院武漢ウイルス研究所」からウイルスが流出した可能性は「極めて低い」とほぼ否定した。また、ウイルスを宿した動物から別の動物を介して人に感染した可能性について「非常に高い」か「高い」とした。

 ただ、報告書では、流行初期に多数の感染者が確認された華南海鮮卸売市場へのウイルスの流入経緯など、起源については明確な結論を下せなかった。WHO国際調査団のベンエンバレク団長は30日の記者会見で「今回の調査を踏まえ、さらなる研究が続く」と述べ、解明に向けた作業を続ける方針を示した。

 調査団は1月中旬から2月上旬にかけて武漢市に滞在。華南海鮮卸売市場や、ウイルス流出の疑惑が取り沙汰される武漢ウイルス研究所などで立ち入り調査を行った。

 報告書では人への感染経路に関し、(1)ウイルスを宿した野生動物からの直接感染(2)「中間宿主」となる動物を介した感染(3)冷凍食品などの食品流通網を経由した感染(4)武漢ウイルス研究所からの流出-という4つの仮説を検証した。

 報告書は(1)の野生動物からの直接感染については「可能性が高い」か「可能性がある」とした。(3)については「可能性がある」とし、冷凍食品に付着したウイルスが国外から流入したとする中国の主張を完全には排除しなかった。

 調査団は2月9日に現地での活動を終えた際に記者会見し、ウイルスの「武漢起源」説を否定したい中国側の主張におおむね沿った見解を示していた。今回の報告書も、仮説をめぐる見解について2月の記者会見と大筋でほぼ同じ内容となった。

 報告書は調査団と中国側が共同で執筆しており、ブリンケン米国務長官は28日放送されたCNNテレビの報道番組で「(調査の)手法やプロセスについて深刻に懸念している」と述べていた。

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