海外情勢

カンボジアの外国人観光客8割減 20年、コロナ収束せず大打撃

 カンボジア観光省によると、2020年にカンボジアを訪れた外国人観光客は約131万人で、前年比8割減となった。同国では今年2月下旬に発生したプノンペンを中心とする市中感染が今も広がり、収束のめどが立たない。観光業界は21年も厳しい状況に直面しそうだ。

 観光省によると、20年にカンボジアを訪れた外国人客は130万6143人。空路が58%、陸路が42%で、総数は19年と比べ80.2%も減少している。カンボジアでは20年1月末に初めての新型コロナウイルス感染者が確認され、観光客の減少は明らかに新型コロナが原因だ。

 国別にみると、最も多かったのは中国人で約33万人。しかし前年比では86%減少した。続いてタイ人(21万人、55%減)、ベトナム人(18万人、80%減)、米国人(5万6000人、78%減)、韓国人(5万6000人、78%減)などとなっている。日本人は訪問者数では第8位で、約4万1000人。前年比で80%減少した。

 今年は市中感染深刻

 外国人観光客が長期にわたり見込めないなか、カンボジア人を対象とした国内旅行の需要増が期待された。観光省によると、20年の国内旅行者数は、カンボジア人が約600万人、外国人が約169万人。外国人は前年比で78.6%減だが、カンボジア人は27.5%減にとどまり、市中感染が発生するまでは、国内旅行需要が受けた影響は比較的小さかったことが分かる。しかし、今年2月に発生した市中感染によりこれまでにない規模で感染が拡大しているため、21年は国内旅行の需要も深刻な打撃を受ける恐れがある。

 カンボジアでは、20年の新型コロナ感染は他国に比べて抑制されてきた。市中感染は11月になるまで発生しておらず、それまでの感染者は全て、外国から入国した人やその濃厚接触者だった。このため政府は水際の防疫策を徹底し、感染急増国からの入国禁止、入国者全員を対象にした空港でのPCR検査と14日間の強制隔離、必要経費として2000ドル(約22万円)の預託金支払い(使用されなかった分は返金される)などを義務付けた。また、在外公館やインターネットによる観光ビザの発給を一時停止しており、現在は、入国のためにカンボジア国内の企業からの招聘(しょうへい)通知が必要になるなどさらに厳しくなっている。

 しかし今年になって、国内の感染拡大が、国外から持ち込まれる感染を大きく上回ることになる。2月20日にプノンペンで発生した市中感染による陽性者は、3月31日現在で1900人を超えた。同日現在の累計感染者数は2440人だが、そのうち1940人が市中感染によるもので、空港での陽性判明者とタイから陸路で帰国した陽性者を合計した526人を上回っている。

 今月1日にはプノンペン都が、感染拡大を防ぐため午後8時~翌午前5時の夜間外出禁止を発令。また、感染はプノンペンにとどまらず、国内の半数以上の州に広がっている。プレアシアヌーク州のシアヌークビルは緊急車両以外の通行を止める封鎖措置がとられ、ベトナム国境のカンダル州コットム郡はカジノ街でクラスター感染が発生したため、郡内全てのビジネス活動を停止する事態に。このほかにも、各州が州境に検問を設けるなど、国内の移動や活動が制限されている。

 正月連休も外出抑制

 また、今回の市中感染が、強制隔離を脱走した外国人が感染を知らずに転々としたことが発端とされるため、強制隔離や検査の指示に従わなかった場合の罰則を盛り込んだ法令が施行された。外国人の場合は、強制退去のうえ再入国を拒否される可能性もある。保健省令では、公共の場所でのマスク着用やソーシャルディスタンス(社会的距離)の確保も義務化され、違反者には罰金規定が設けられた。さらに、感染者が確認されたマンションなどは建物ごと2週間の隔離封鎖となる。プノンペンは都市封鎖は実施されていないが、建物ごとに封鎖される事例が相次いでいる。

 隣国タイでは、4月から一定の条件を満たした外国人訪問者の隔離期間が短縮され、7月からはプーケット島で外国人観光客を隔離期間なしで受け入れる取り組みも実験的に始まる予定だ。しかしカンボジアでは、市中感染の拡大が抑制される見通しが立たない。今月14日からのクメール正月の連休も、既に「外出は控えるように」との呼びかけがあり、人の動きはますます鈍くなりそうだ。(カンボジア日本語誌「プノン」編集長 木村文)

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