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秘密特許制度、防衛省の協力不可欠

 桜井孝・IPCC副理事長

 安全保障体制が問われる昨今だが、安倍晋三政権時代に浮上した「秘密特許」制度導入への動きが遅い。元特許庁技監で「防衛技術の守り方(日本の秘密特許)」(発明推進協会刊)の著者で知られる桜井孝・工業所有権協力センター(IPCC)副理事長に課題を聞いた。

 --防衛、経済面の安保や国家機密を守るため、出願を非公開とし、企業や発明者に秘密保持を課して外国出願を禁止する秘密特許制度の導入は重要だ

 「主要国で制度がないのは日本だけ。国家安全保障局がしっかり動き、防衛省や特許庁が協力して作り上げなければならないが、課題が多すぎる。1つは、安保上で重要な技術だとの判断を誰がやるのかである。特許庁審査官にできるとは思えない。現在、国内からの出願は年間約25万件もある。非公開を判断する期間も重要。米国は現在、6カ月間だ。戦前は旧陸海軍の技術将校や技官が特許庁審査官の2割を占めていた」

 --安保面からの膨大なふるい分け作業があると

 「加えて、出願人に対する補償問題がある。出願され審査もしていない段階で、将来の商機を見極め、補償金額を決めないといけない。戦前は、軍事上必要ならば国が収用できる特許法上の規定があり、補償金額に不満があれば裁判所に訴えを起こせた。日本で同制度が廃止されて70年余り、日本企業は自由にやってきた。産業界の賛同を得られるのだろうか。裁判は秘密裁判になる」

 --日本では実務面も民意からも法制化は難しいと

 「やり方次第ではと思う。防衛省が自ら開発あるいは委託研究で出た成果で、安保上から非公開にすべき発明だけ、防衛大臣の請求を添えて出願すれば、特許庁でのふるい分けはいらなくなる。他国企業並みになることでは、決定的な阻害要因にはならないかもしれない」

 --どういう法律になるとみているのか

 「特許法改正だけではしっくりこない。法の目的条項として第1条に、公開の代償によって特許権を与える趣旨が書いてあるからだ。このため国家安全保障局が特別法を作るとみている。特別法に特許公報を通じての技術流出を防ぐ条項を入れ、非公開にするか否かを判断する期限や第一国出願制度、補償の仕方を定める。これなら、特許法で非公開に指定された特許は指定が解除されない限りは公開しない、と1項入れれば済む。これが正解かどうかは分からないが、早く法案が出されることを待ち望んでいる」(知財情報&戦略システム 中岡浩)

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