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こども庁、孤独・孤立…相次ぐ自民主導のリベラル政策、選挙でも争点になるか

 菅義偉政権が「こども庁」創設や孤独・孤立対策など、自民党がこれまで主要課題としてこなかった政策に取り組み始めている。少子高齢化に加え、新型コロナウイルス禍で生活困窮者の増加に伴う女性や若者の自殺、子供の貧困の深刻化といった社会の変容が背景にあるが、秋までに実施される衆院解散・総選挙を意識し、与野党対決の争点つぶしと無党派層への支持拡大の狙いもあるようだ。

 「社会保障費も含めて今まで高齢者中心だった。思い切って変えなければ駄目だ。子供は国の宝で、もっと力を入れるべきだ」

 首相は4日のフジテレビ番組でこども庁の意義をこう強調した。安倍晋三前政権では「1億総活躍」「まち・ひと・しごと」など首相官邸が打ち出した政策課題を党側が受け止める「政高党低」が目立った。これに対し菅政権では、政府が進める具体的な対策でも自民の主導が際立つ。

 こども庁は、今年に入って自民若手の間で議論が本格化。こうした動きを踏まえ、首相は二階俊博幹事長に党総裁直属の本部組織の立ち上げを指示し、13日に初会合を開催した。

 孤独・孤立対策も党主導の一例だ。首相は2月、坂本哲志地方創生担当相を孤独・孤立対策担当に任命し、対策室を設置した。これに先立つ令和元年10月、党では参院に「不安に寄り添う政治のあり方勉強会」(座長・世耕弘成参院幹事長)が発足して対策とりまとめを主導。若手議員も今年1月に「望まない孤独」について議論する勉強会を始動させた。

 政府が3月16日にまとめたコロナ禍の長期化による生活困窮者向けの「緊急支援策」では、勉強会が訴えるひとり親、ふたり親を問わず低所得の子育て世帯への現金給付や困窮者を支援するNPO(民間非営利団体)への補助も盛り込まれた。

 勉強会の呼びかけ人の一人である鈴木貴子衆院議員は「首相は政策通で、官房長官時代から非常にアンテナを意識的に高くしている」と党内の議論の風通しの良さを評価する。

 自民は憲法改正を党是とし、安倍前首相は改憲に加え外交・安全保障に注力してきた。菅政権で自民が着手する政策は趣が異なるが、「安倍氏に比べ首相はイデオロギー色が薄い」(閣僚経験者)とみられていることも要因の一つのようだ。

 「国民目線」「国民のために働く内閣」を掲げる菅政権にとって、こども庁や孤独・孤立対策は、次の衆院選で無党派層に支持を広げるカードにもなり得る。

 こども庁に関する自民の初会合があった13日、立憲民主党も会合を開き、「子ども家庭庁(仮称)」創設の検討に着手した。福山哲郎幹事長は「選挙を目の前に(自民側から)こども庁が突然出てきたのは非常に驚く。思いつきで議論されては困る」と批判した。

 福山氏は「約15年前から設置を主張してきた」とも強調した。その間の旧民主党政権でも実現できなかった難題だが、与野党で選挙を見据えたさや当てが始まっている。

 一方、立民が打ち出すようなリベラル色の強い政策に対し、「岩盤地盤」として党を長く支える保守層には懸念もある。首相は党内で激しく賛否が分かれる選択的夫婦別姓の導入について過去に前向きな意向を示したことがあり、首相がリベラル色の強い政策に前のめりになれば、保守派議員の反発を招くことにもなりそうだ。(児玉佳子、大島悠亮)

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