真山仁の穿った眼

なぜ、東芝は幻想から抜け出せないのか アクティビストの餌食となった“名門” (1/2ページ)

真山仁
真山仁

 東芝買収提案を撤回した英ファンド

 かつて、東証1部に上場することは、企業として(おそらく経営者として)輝けるステイタスだった。

 今も、起業したらいずれは、マザーズでもナスダックでもいいから、上場(IPO=新規株式公開)するのが目標とされる。

 だが、バブル経済が崩壊してからは、上場すれば、「誰かに買収されても、文句は言えない」現実が顕わになった。業績が優秀であればなおさら、世界中の投資家から狙われる可能性が高くなると、覚悟しなくてはならない。

 投資家もいろいろいる。優しくエールを送る応援団から、配当目当てだったり、買収を狙っていたり、買収するぞと脅しておいて、高く株を買い戻せと迫るグリーンメーラーと呼ばれる厄介な相手もいる。

 そして、近年、日本で活発に闊歩しているのが、アクティビストこと「物言う投資家」だ。株主として、経営陣の事業方針に異を唱えたり、経営参画を求めたり、配当金をもっと出すように迫るなど、タイプはまちまちだが、経営陣にとって「可能な限り、関わりたくない相手」であるのは、間違いない。

 そんなアクティビストの攻撃から逃れようと四苦八苦していた、日本を代表する名門企業が、最近、メディアを賑わせている。

 東芝だ。

 臨時株主総会で、アクティビストからの提案が賛成多数で可決されたかと思うと、今度は、英国の投資ファンドCVCキャピタル・パートナーズ(以下CVC)から、買収提案を受けた。買収額は、2兆円。

 一般庶民にとっては途方もない額だが、全盛期の東芝だったら、「一昨日来やがれ!」と門前払いしただろう。とはいえ、不祥事の末に破綻危機に至って、未だ再生途上にある状況を考えると、結構な大盤振る舞いのように、私などは感じた。

 ところが、このCVCは、買収提案を受けた時の社長だった人物が、かつて日本法人の会長を務めていたファンドだったため、社内外にきな臭いムードが漂った。

 しかも、東芝は今年1月、約3年半ぶりに東証1部に復帰したばかりなのに、買収が成功すれば、CVCは東芝を非公開化するという情報も出てきた。

 これは、社長とファンドによるアクティビスト対策ではないかという指摘が相次ぎ、結局、社長は辞任する。さらに4月20日には、CVCが買収提案を事実上撤回するというニュースが流れた。

 小説を読むような、複雑怪奇なさまざまなドラマが満載の詳細は、ぜひ経済記事を紐解いてほしい。

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