政府のデジタル市場競争会議は27日、急成長するインターネット広告分野の課題への対応策を整理した最終報告をまとめた。米グーグルなど巨大IT企業による市場の寡占化や取引の不透明さへの懸念が指摘される中、2月に施行された巨大ITの取引透明化に向けた新法の対象にネット広告分野を追加することが柱。巨大ITに対し、取引に関するルールを変更する場合は内容や理由を事前に開示する義務や、不正行為のリスクへの説明責任の徹底などの対応を求める。政府内で法制面の調整を進める。
2022年度以降に適用する方向だ。ネット広告分野で何らかのルールを導入した国は現時点ではないとみられ、会議の議長である加藤勝信官房長官は「わが国がネット広告市場のルール整備について世界に先駆けて方針を決定することは非常に意義深い」と述べた。
新法では現在、一定の規模を超えるオンラインモールとアプリストアを規制の対象としており、取引条件の情報の開示などを義務付けている。ネット広告分野を政令で定め、新法の規制の対象に加える方向だ。新法が適用される事業者の規模などは今後詰める。
ネット広告分野では、巨大ITが市場の設計や運用で影響力を強めている。システム全体が複雑で変化が速く、取引内容や価格が見えづらいという特徴が挙げられる。クリック回数の水増しなどで不正に広告収入を得る詐欺的行為「アドフラウド」など、質に関わる問題も指摘されている。
最終報告は巨大ITに対し、第三者による広告効果の測定を受け入れるといった体制整備や、虚偽請求などのリスクに対する説明責任を果たすことを要求。ネット上の閲覧や購買の履歴から個人の好みを推測して表示する「ターゲティング広告」については、収集する個人データの内容や使用条件の開示などを求めた。
新法は、規制の大枠を政府が定めながら、細かな取り組みは巨大ITの自主性に委ねる「共同規制」と呼ばれる手法を用いており、最終報告はこうした枠組みがネット広告分野の課題解決に適しているとした。