海外情勢

インドは「感染の嵐」 二重変異株へ警戒高まる

 【シンガポール=森浩】インドで新型コロナウイルス感染が世界最悪のペースで拡大中だ。26日に確認された1日の新規感染者は35万人に達した。強い感染力を持つとされる「二重変異株」の出現が影響している可能性がある。感染者急増に病院の受け入れ態勢が追い付かず、医療用酸素の不足で死に至る患者が続出。ワクチン輸出で国際社会での影響力拡大を目指したモディ政権だが、国内の押さえ込みに苦しんでいる。

 「感染の嵐が国を揺るがしている」。モディ首相は25日の演説で、新型コロナ感染の再拡大に危機感をあらわにした。首都ニューデリーの地元政府は26日早朝までの外出禁止令を5月3日まで1週間延長。欧米諸国は相次ぎインドへの支援を表明した。

 インドは昨年9月に新型コロナ感染の第1波のピークを迎え、10月以降は減少傾向が続いたが、今年3月に再び増加が始まった。今月22日に1日として世界最多となる約31万5千人の新規感染者が確認され、毎日のように過去最多を更新している。累計の死者は19万人を超えた。

 医療現場は崩壊の危機に直面している。政府は医療用酸素の不足に対応するため、工業用液体酸素を転用するように命じたが、需要が供給を大幅に上回っている。ニューデリーの私立病院では予定されていた酸素の到着が遅れたために少なくとも20人が死亡。別の病院の医師は「医療従事者にも感染者が出ている。患者を受け入れられる状況ではない」と話した。

 国内では1つのウイルス内で2つの変異が起きた二重変異株が拡大の一因との見方が上がっている。西部マハラシュトラ州で1~3月に採取されたサンプルのうち、61%が二重変異株だったという。二重株にさらに変異が起きた三重変異株が確認された可能性があるとの報道もあり、国民の不安が高まっている。

 ヒンズー教至上主義を掲げるモディ政権が、宗教行事に制限を掛けていないことも一因として指摘されている。今月に入って、ガンジス川で身を清めるヒンズー教の祭典「クンブメーラ」が実施され、数百万人が参加。大規模なクラスター(感染集団)の発生につながった。

 インドでは1月からワクチン接種が始まり、英国の研究者らの統計では、人口の8・5%が少なくとも1回の接種を受けたが、拡大は収まらない。感染症に詳しい医師は「接種開始で人々が安心し、マスク着用や手洗いといった最も大事な対策を緩めてしまった可能性がある」と話している。

 インド二重変異株 インド国内で発見され、1つの新型コロナウイルスで「E484Q」「L452R」という2つの変異があるのが特徴。

 この株の変異は、ウイルスが人の細胞に取り付く足掛かりとなる「スパイクタンパク質」で発生。感染力の増強や免疫の低下、ワクチンの効果に影響を与える懸念があるとされる。

 2つの変異のうちE484Qは、スパイクタンパク質の484番目のアミノ酸が置き換わっていることを示す。感染力が高いとされる南アフリカ株とブラジル株はこの場所で別の変異が起きている。

 L452Rは452番目のアミノ酸が置き換っており、米国内で猛威を振るうカリフォルニア株が同じ変異を持っている。

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