中国を読む

国内生産能力を活用し輸出回復

 アジア経済研究所・箱崎大

 中国の急速な回復は、政府の生産回復の後押しや徹底した人々の行動監視による感染の抑え込みによりもたらされた。それは権威主義的政治経済体制のなせる業にもみえる。世界的な経済停滞の中での迅速な生産回復は、輸出拡大という副産物を中国にもたらした。

 強力な「復工復産」

 新型コロナウイルス禍により世界経済の停滞が続く中、中国の急速な回復は目を引く。2020年は1~3月期こそ国内総生産(GDP)成長率が前年同期比マイナスとなったが、4~6月期には早くもプラス成長に転じた。背景には、中国共産党と政府による強力な「復工復産(職場復帰・生産再開)」の展開があったとみている。

 新型コロナ感染症は19年末に報じられ始め、瞬く間に感染の勢いが増し、“震源地”である湖北省武漢市は20年1月23日に都市封鎖を余儀なくされた。そうしたなか中国政府は、医療物資中心ではあるが、同月末から「復工復産」の模索を始める。2月7日には広東省政府が「復工復産」支援策を打ち出した。景気の先行きが不透明という状況では、市場経済国の普通の企業なら生産再開に躊躇(ちゅうちょ)するところだが、中国の工業生産(季節調整値)は20年2月に前月比20%超減少した後、翌月には1月の水準に戻っている。

 中国政府は並行して、スマートフォンアプリによる人々の厳しい行動制限を展開し、そのかいあってか武漢の都市封鎖は、4月8日に解除された。日本の緊急事態宣言の翌日のことである。

 この頃の中国の消費を季節調整値でみると、20年1~4月は底ばいが続いていたものの、5月になると明らかに水準が高まっている。この改善は、武漢都市封鎖解除のタイミングと一致する。夏場、それまでV字回復を続けていた固定資産投資が停滞したが、消費の回復がそれを補った。

 純輸出が押し上げ

 四半期別GDPの前年同期比成長率を需要項目別にみると、20年後半は純輸出(輸出から輸入を差し引いたもの)の押し上げが大きくなっている。

 純輸出は19年もプラスに効いていたが、この時は輸入の不振によるもので、これに対し20年は輸出増によるプラスとみられる。

 世界の主要国の輸出をみると、ほぼ20年7~9月期が底だが、中国の輸出は4~6月期に底を打ち、年末には他地域を大きく引き離した(図)。他方、中国の輸入の回復は、時期もテンポも世界の他地域とさほど違いはなく、回復は7~9月期以降である。中国は、かつては加工貿易基地で、輸出するにも多くの部品や材料の輸入を必要としたが、近年は中国国内で調達可能な部品や材料が増えているためだろう。

 20年10~12月期の中国の輸入を前年同期と比べた場合、中国の輸入の中でシェアを高めた国・地域として、台湾、ドイツ、スロバキア、ベトナムがある。うち、ドイツとスロバキアから増えたのは完成車の輸入であった。

 残る台湾とベトナムだが、台湾からの輸入の中心は集積回路とハードディスク、ベトナムは携帯電話用部品だ。ハードディスクはマレーシアからの輸入も好調だった。ちなみに日本からの輸入をみると、完成車は不振だったが半導体製造装置はかなり好調だった。

 総じていえば、デカップリング(分断)論をよそに、コロナ禍からの早期回復は中国に、輸出拡大という副産物をもたらした。高付加価値分野の半導体の国内生産など課題はあるものの、ここ1年あまりの世界貿易の動きが示すのは、製造基地としての中国の存在感の大きさである。

【プロフィル】箱崎大

 はこざき・だい 都市銀行、シンクタンク研究員、香港駐在エコノミストを経て、2003年日本貿易振興機構(ジェトロ)入構。北京事務所副所長、海外調査部中国北アジア課長を経て、18年から新領域研究センター主任調査研究員。

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