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経団連・中西氏任期途中で辞任 デジタル・気候、道半ば無念の交代

 「財界総理」と呼ばれる経団連の会長職を、任期途中で辞任する中西宏明氏。政権との良好な関係を維持すると同時に、大きく遅れる日本のデジタル化や、気候変動問題への対応を重点課題に据え、会長最終年度となる今年はその実現に向けた具体的な施策を打ち出す考えだった。

 コロナ禍で感染対策と経済の両立という極めて難しいかじ取りが求められる最中の突然の財界トップの交代は、経済界にとって大きな痛手だ。

 「経団連会長の職を全うしたい」。病室からオンラインでつないだ2021年の新春インタビューで、中西氏は強い口調で語った。それだけに、任期途中での辞任は無念に違いない。次期会長の住友化学会長の十倉雅和氏も「中西さんの無念な思いに胸が詰まる」と話す。

 18年に会長に就任した中西氏は、前会長の榊原定征氏が「政権に近すぎる」との批判があったなかで、「政府と経済界は立場が違うこともある。はっきりものを言えばいい」と、是々非々の姿勢をみせた。実際に、全世代型の社会保障検討会議で政府方針に異論を唱え、その発言が議事録から削除されるといったこともあった。

 だが、関係は悪化せず、特に菅義偉政権は、中西経団連の政策提言能力を積極活用する姿勢を示した。中西氏は日本の大きな課題は、出遅れているデジタル化と気候変動対応だと強調。今年9月に予定されているデジタル庁創設につながった。

 菅首相就任直後には、入院治療中の中西氏は首相官邸に赴き、世界的な潮流として脱炭素の取り組みが急加速すると直言。50年の温暖化ガス排出実質ゼロ目標設定や、革新的な技術開発を経済成長につなげる「グリーン成長」の重要性を訴えた。

 一方、中西氏の改革の大きな成果は、日本経済の大きな課題が中長期的にはデジタルと脱炭素だと明確に規定し、政権と足並みをそろえたことだ。本来なら昨年の後半からこれらの課題解決に向けた実行計画策定などの具体化を始めるはずだったが、リンパ腫再発で計画が大きく狂うことになった。

 1946年の経団連設立以来、初めてとなる女性副会長を内定するなど、多くの改革の方向性は中西氏が示した。十倉経団連では、中西氏が道筋を付けた改革の方向性を踏襲しながら、日本経済の課題解決に向けた実行計画の策定を急ぐ必要がある。(平尾孝)

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