海外情勢

カンボジアの21年成長率4% ADB見通し、観光業不振で回復遅れ

 アジア開発銀行(ADB)は4月28日、「アジア経済見通し2021年版」を発表した。新型コロナウイルス禍は続いているもののワクチンの普及により、21年のアジア開発途上国の経済成長率は7.3%に回復すると予測している。カンボジアについては旅行業を中心とするサービス業の回復に時間がかかるため、4%にとどまる見通しを示した。

 第2次産業は7%

 経済見通しによると、アジア開発途上国の20年の経済成長率はマイナス0.2%。多くの国が新型コロナの影響から抜け出すことができなかった。しかし、21年には7.3%、22年には5.6%の成長が見込まれるとしている。ADBは「この地域の成長の軌道は、国内の感染拡大の程度、ワクチン接種のペース、世界経済回復の恩恵をどの程度受けられるかによって決まる」としている。

 カンボジアの21年の経済成長率は4.0%と予測され、20年のマイナス3.1%からは回復するがそのスピードは遅く、高い成長率はまだ見込めない。そうした中でも回復が早いのは、製造業など第2次産業で、21年は7.1%、22年には7%の成長率が予測されている。中心となる縫製業や靴、旅行用品などの輸出が回復する可能性があるとしている。

 農業など第1次産業は、中国への輸出が増えるとして、21年は1.3%、22年は1.2%と堅調な成長率を予測。サービス業を含む第3次産業は、21年は3.3%の成長率にとどまり、22年には6.2%と予測されている。新型コロナ感染拡大による移動規制が続くなか、観光業の不振は回復に時間がかかるとみられている。ADBは、セクターにより回復力が大きく違うため、カンボジア経済の全体的な回復には時間がかかるとみる。

 市中感染の収束が鍵

 ADBによると、経済回復の鍵となるのは国内的にも国際的にも、新型コロナの感染抑制だ。主要な貿易国である米国や欧州の経済回復が、カンボジアの国内産業にも多大な影響を与える。また、カンボジアでは今年2月に発生した市中感染が今も収束していない。都市封鎖や事業休止などは個人の家計に深刻な影響を与えており、消費意欲も減退している。

 カンボジア保健省によると、5月半ばまでの新型コロナ累計感染者数はカンボジア全国で2万人を超えた。カンボジアは2月の市中感染が発生するまでは、感染者は累計で400人程度に抑えられており、そのほとんどが国外からの輸入症例だった。しかし2月の市中感染発生以降、感染者はプノンペンを中心に増加。約3カ月後には感染地域がついに全国に広がってしまった。また、新型コロナによる死者は、初の感染症例が確認されてから1年以上たった今年3月11日に初めて確認され、5月半ばまでに136人に増えた。

 プノンペンでは工場や市場でのクラスター感染も相次ぎ、危機感を持ったカンボジア政府は4月15日~5月5日まで、プノンペン都ならびに隣接するカンダル州タクマウ市を都市封鎖した。基本的に家からの外出は禁止され、必要最小限のビジネス以外は営業が認められず、飲食店は配達のみが許されるなど厳しい措置がとられた。都市封鎖解除後も、夜間外出禁止令や一部地域の封鎖は続き、完全な社会活動の復活には至っていない。

 また、懸念されるのは医療の逼迫(ひっぱく)だ。新型コロナ陽性と診断され治療中の人は全国で1万2000人以上。既に公立病院の病床は足りず、ホテルや展示場などが仮設の病院として陽性者を収容している。また、カンボジア保健省は増加する感染者に対応するため、これまで許可していなかった民間病院での患者受け入れを認め始めた。5月半ばには、カンボジアで初めてのインド型変異株の感染者が確認されており、1日の感染者数が減少傾向にあるとはいえ、予断は許さない状況だ。(カンボジア日本語情報「プノンネット」編集長 木村文)

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