国内

デジタル化 遅滞挽回、人材発掘など必須 総務省有識者会議が提言

 総務省は25日、新型コロナウイルスの感染拡大で浮かび上がった課題に対応するためにデジタル社会で取り組む施策について議論する有識者会議を開き、提言書案をまとめた。デジタル化の遅れがテレワークの普及やワクチン接種などが進まない原因となっており、人材育成のほか、企業や行政への支援を強化するよう求めた。総務省は提言をもとに具体的な取り組みを来年度の予算案などに盛り込む。

 提言書案では、国民へのデジタル活用の浸透と企業や自治体のデジタル化の推進などを重点課題とした。IT技術に精通した人材の確保や多様なデータを連携させて活用する仕組みの構築など、今後の施策の方向性を示した。参加した有識者は「グローバルな競争の中で日本の産業がどう生き残るかが重要」とテレワークが普及しない中小企業などへの支援強化を求めた。

 急拡大したコロナ禍で、日本社会は対応に追われたが、1年以上経過してもテレワークなどは定着しきれていない。ワクチン接種でもオンラインでの予約システムなどが十分に生かされず、影響が長期化する中でデジタル面の脆(ぜい)弱(じゃく)性が浮き彫りになっている。

 有識者の多くが警鐘を鳴らしたのが人材不足だ。小規模な自治体では、IT担当者が1人しかおらず、業務が集中する現実もある。提言書案では、技術や知見を学べる研修制度や必要な専門性を満たす人材をマッチングできる仕組みなどを求めた。企業には情報通信の基盤に継続して投資を行うなど、デジタル技術の開発や積極活用する必要を指摘した。

 日本の遅れは、情報通信技術(ICT)分野への投資額をみれば一目瞭然だ。米国が技術の発展とともに、約20年間で2倍以上伸びているのに対し、日本の投資額がほぼ変化がない。

 投資内容も通信網の整備が中心で、技術革新への対応は不足している。高速通信網などのインフラは世界有数の整備率を誇るが、テレワークなどで十分に活用できていない。情報流出への危機意識も低く、サイバー攻撃への備えも急務としている。

 また、国民一人一人の技術への理解も欠かせない。欧州委員会(EU)は2030年までに、基礎的なデジタル技術を身につけた成人の割合を現在の約60%から80%に引き上げる数値目標を掲げている。委員からは「海外の事例も参考にして、スマートフォンやパソコンなどの使い方を学ぶ機会が必要だ」などの意見が出された。(高木克聡)

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus