高論卓説

IMFの評価得たサウジ経済 アラムコ株売却で財政再建にスピード

 サウジアラビアのムハンマド皇太子は、4月27日にテレビ放映された「ロターナ・ハリージア・チャンネル」での経済改革「ビジョン2030」の5周年記念インタビューで、国営石油会社サウジアラムコの株式売却による歳入の増加が予想されると述べ、今後の同国経済の先行きに自信を示した。

 インタビューでは、サウジアラムコ株1%ほどを世界のエネルギー大手に売却する方向で協議していることを明かした。世界のエネルギー大手がアラムコ株を取得することは、アラムコの主要国での販売押し上げにつながる重要な契機になるという。さらに今後1、2年以内に、国際的な投資家に追加で売却する可能性もあるとした。

 また、国際通貨基金(IMF)は今月上旬、サウジ経済は「ビジョン2030」戦略により新型コロナウイルス禍を克服しつつあり、2022年の経済成長率は5%近くまで上昇することが予測されるとの最新評価を明らかにした。

 IMFがサウジ経済について指摘した内容は次の通り。

 (1)サウジは新型コロナ危機に対して迅速かつ決然と反応した

 (2)「ビジョン2030」改革が、新型コロナ禍で経済を推進させる上で重要な役割を果たしている

 (3)21年の国内総生産(GDP)成長率は2.1%で、22年は急激なV字回復で4.8%にまで上昇すると予測する

 (4)経済回復は進展しており、失業率が低下し消費者物価上昇率は緩和している

 (5)将来の成長のカギとして注目される非石油部門の成長率は、21年が3.9%、22年が3.6%とプラス成長への回復が見込まれる

 (6)石油部門の成長率も、OPECプラスの減産が終了するほか、石油価格の急騰を多くの専門家が予測していることから、22年には6.8%まで上昇すると予測する

 (7)サウジ金融部門では、引き続き規制や監督がしっかりと実施され株式・債券市場の改革も良好なペースで進んでおり、外貨準備高も引き続き十分な水準にある

 今回のIMF報告書についてサウジのジャダン財務相は、世界的危機の中で、政府が良好な結果を出したことを評価したものと論評するとともに、最近の改善しつつある同国経済について、新型コロナ禍、石油価格の乱高下、急激な経済変動、世界的な需要の低下および経済後退など、政府が立ち向かってきた多くの困難の中で達成されたものであると述べ、先行きに自信を見せていた。

 実際、サウジ経済は回復の途上にはあるようで、財務省は4日、今年1~3月期の財政赤字額が約20億ドルと、前年同期に比べて18%縮小したことを発表している。

 しかし、サウジの財政実績を振り返ってみると、14年から20年まで巨額の財政赤字が続いている。1000億ドルを超える年もあったほどだ。財政赤字額は7年間の合計で4649億ドル(IMF推計を基に計算)。1ドル=109円で日本円に換算すると、50兆6741億円にも上る。

 果たして、サウジ経済がIMFの見立て通りに著しく改善していくことになるのか。世界の石油需要がさらに回復するとみられる今年下半期(7~12月)の同国の財政動向に注目したい。

【プロフィル】畑中美樹

 はたなか・よしき 慶大経卒。富士銀行、中東経済研究所カイロ事務所長、国際経済研究所主席研究員、一般財団法人国際開発センターエネルギー・環境室長などを経て、現在、同室研究顧問。東京都出身。

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