【ニューヨーク=平田雄介】2016年5月に広島を訪問した当時のオバマ米大統領が「核兵器のない世界」を追求すべきだと発言してから27日で5年が経過したが、現状は核兵器「廃絶」からほど遠い。核弾頭保有数で突出する米露の削減努力だけでなく、台頭する中国の軍縮・軍備管理の枠組みへの取り込み、人工知能(AI)など新技術がもたらす近代化への対処など新たな課題も浮上する。
ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によると、核兵器を持つ国は核拡散防止条約(NPT)で保有を認められた米露英仏中のほか、インド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮の9カ国。19年末の核弾頭の総数は1万3440発に上り、うち約3720発が実戦配備されている。
最大の保有国はロシアで6375発。2位の米国が5800発。3位は320発の中国で15年末の260発から増強が進む。印パも数を増やし、北朝鮮は核兵器の開発を安全保障戦略の中心に据えている。
軍縮・軍備管理では19年8月に米露の中距離核戦力(INF)全廃条約が失効した。米露が核軍縮を進める間に、条約に縛られない中国が開発を進め、西太平洋に展開する米艦隊への脅威となっていることも背景に、トランプ前米政権が破棄を通告していた。
中国の核弾頭数について米国防総省は「今後10年間で倍増する」とみる。中国政府は「核兵器の先制不使用」を掲げるが、05年7月に朱成虎国防大学教授(当時)が欧米紙に「台湾有事で米国が中国を通常兵器で攻撃すれば中国は核兵器で応答する」と答えており、先制使用への懸念が消えない。
こうした中、米露は今年2月に新戦略兵器削減条約(新START)の5年間延長に合意した。今後は中国も参加する新たな軍備管理の枠組みを構築できるかが焦点だ。しかし、中国は核弾頭の保有数が米露と比べ圧倒的に少ないことなどを理由に消極的とされる。
核兵器の不拡散も後退した。北朝鮮は17年9月に6回目となる核実験を行い、米国に届く大陸間弾道ミサイル(ICBM)を含め開発を進めた。イランの核開発を制限し、軍事転用を防ぐための「核合意」はトランプ前政権が離脱したのを受け、機能不全に陥った。
核軍縮が進まない中、非核国が中心となり今年1月、核兵器の開発や実験、保有、使用を全面的に禁じる核兵器禁止条約が発効した。核保有国や米国の「核の傘」に依存する日本や大半の欧州諸国は署名していない。
核兵器の運用におけるAI活用など国際的なルールが確立されていない技術革新をどう管理・制限していくかも、今後のNPT再検討会議などで課題となる。