【ワシントン=黒瀬悦成】バイデン米政権は、ベラルーシ当局が同国上空を飛行中の旅客機を強制着陸させ、乗っていた同国の反体制派記者を拘束した問題で、ベラルーシのルカシェンコ強権体制に対し、欧州連合(EU)諸国と連携して制裁措置を含めた圧力を強化していく考えだ。
バイデン大統領は25日、記者団に、ベラルーシ制裁の可能性について「取り組みを進めているところだ」としつつ、内容については「(準備を)終えるまでは臆測を話したくない」と述べるにとどめた。
サキ大統領報道官によると、関係当局が策定した複数の選択肢が近くバイデン氏に提示される見通し。
バイデン政権は「報道機関の独立は、法の支配を下支えする枢要な柱だ」(ブリンケン国務長官)との立場から、ルカシェンコ体制が記者に対する嫌がらせや恣意(しい)的な拘束を国内で繰り返していることに懸念を表明している。
特に、今回の強制着陸については「ルカシェンコ体制による国際的な平和と安全への恥知らずな侮辱だ」(サキ氏)と非難するなど、「自由と人権」を尊重する立場から同体制の行動を容認しない立場を打ち出した。
米政権はまた、ベラルーシの民主化推進を求める勢力を支援していく方針を重ねて示し、EU諸国などと一緒にルカシェンコ体制への「包囲網」を構築していく構えだ。
バイデン政権は同時に、強制着陸を「完全に妥当だ」と擁護したベラルーシの盟友、ロシアにも厳しい態度で臨む。
サキ氏は25日、バイデン氏がロシアのプーチン大統領と6月にジュネーブで予定する初の首脳会談でもベラルーシ情勢について提起し、「重大な懸念」を表明する見通しだと述べた。
バイデン政権は現時点でロシアが強制着陸に関与したと結論付けていない。
ただ米政府は、不正が疑われた昨年のベラルーシ大統領選での抗議デモを弾圧し、強権支配を続けるルカシェンコ体制をロシアが支持すること自体が、ベラルーシ国民が自由・公正に指導者を選ぶ権利を侵害する行為だと位置づける。
バイデン氏は6月の会談でプーチン氏に対し、ベラルーシ国民の市民的権利を抑圧する行為を後押ししないよう態度変更を求めていく考えとみられる。