【ワシントン=塩原永久】バイデン米大統領は28日、就任後初めて策定した2022会計年度(21年10月~22年9月)の予算教書を議会に提出した。経済再建と社会福祉の拡充に重点投資し、歳出額は要求ベースで6兆110億ドル(約660兆円)と戦後最大の水準に膨張。今後10年間は歳出増と財政赤字の拡大を容認する想定を示した。経済運営を国が主導する「大きな政府」の傾向が鮮明だ。
バイデン氏は、教書の狙いが「国力の基盤に再投資することにある」と指摘。インフラ整備や気候変動対策、労働者層を支える教育・福祉の充実、科学技術や研究開発の底上げなど、全方位的に手厚い予算を配分する意向を強調した。
22年度の歳出要求額は21年度教書に比べて24%増。歳入は4兆1740億ドルと8%増を見込んでいる。
歳出額は増え続け、31年度に8兆2110億ドルに到達。企業や富裕層への増税で穴埋めしても、財政赤字が今後10年間で累計14兆5310億ドル(約1600兆円)に達すると想定した。
連邦政府債務の国内総生産(GDP)比は、22年度の112%から、31年度に117%まで上昇し、戦後最悪を更新する。
バイデン政権が、財政再建を後回しにしてでも、国内に投資する財政出動を優先するのは、「(利払い負担が抑えられる)歴史的な低金利の好機を生かし、経済成長と繁栄につなげるべきだ」(政府高官)との認識がある。
ただ、財政規律を重視する野党・共和党から「常軌を逸している」(サス上院議員)などと反発が噴出。予算編成権は議会が握っているため、政府の要望をまとめた予算教書がどこまで実現するかは見通せない。